東レは、3月26日に『航空機用炭素繊維複合材料の開発』について、大河内記念会より「第60回(平成25年度)大河内記念生産特賞」を受賞したと発表した。
同受賞は、米ボーイング社最新鋭の787型機に主要構造部材として採用され、民間航空機としては世界初のオールコンポジット化を実現した、トレカ「T800S/3900―2B」プリプレグの開発と、その生産システム確立が評価されたもの。プリプレグとは、炭素繊維に未硬化状態の樹脂を含浸したシート。同シートを積層・賦形し熱処理により硬化させることで、炭素繊維複合材料が得られる。
同社の「大河内賞」受賞は、第59回(平成24年度)に続き13度目。
同会は「生産のための科学技術の振興」を目的として、大河内賞による表彰事業等を実施している。同賞は、毎年、各方面からの推薦に基づき、日本の生産工学、生産技術の研究開発、および高度生産方式の実施等に関する顕著な功績を表彰するもの。同社は、生産技術、高度生産方式等の研究により得られた優れた発明または考案に基づく産業上の特に顕著な業績に贈られる「大河内記念生産特賞」を受賞した。
炭素繊維複合材料を航空機の主要構造部材として適用するには、材料としての性能の高さに加え、性能が量産スケールにおいても安定して発現すること、合理的なコストで提供可能なことなど多くの課題の解決を要する。同賞受賞は、同社の研究・技術開発により確立された生産システムが評価されたもの。
同材料はその中核を担う分野であり、同社は引き続き高性能、高信頼性の材料を開発・供給することで、次世代航空機への適用拡大、航空機の軽量化、環境対応を先導していくとしている。
民間航空機において、近年の燃料価格の高騰、地球環境問題への対応から、燃費改善による省エネルギー化、CO2排出量の削減は重要課題であり、機体軽量化に繋がる構造材料が強く求められていた。機体を軽量化するには、重さ当たりの強度、弾性率、いわゆる比強度、比弾性率が高い材料を適用することが有効。従来のアルミやチタンといった金属材料から炭素繊維などを用いた複合材料の適用が図られてきたが、その適用範囲は限定的なものだった。
炭素繊維複合材料(CFRP=Carbon Fiber Reinforced Plastics)は、比強度、比弾性率のポテンシャルが極めて高く、航空機構造材料として本命視されてきたが、主要構造材料として全面的に適用するには様々な衝撃に耐えられるタフネス性、低温・高温、湿度や燃料による曝露に対する耐環境性、量産性が課題だった。
受賞に関する主な技術特徴として、同社は、材料面では緻密な要因分析に基づき設計した高強度、高弾性率炭素繊維トレカT800S、エポキシ樹脂に熱可塑粒子を組み合わせる新コンセプトに基づき飛躍的に靭性を高めたマトリックス樹脂3900シリーズを開発し、プロセス面では炭素繊維の製造プロセスを上流から抜本的に見直し、高性能、量産性、経済性を同時に満たす生産システムを構築し、航空機の主要構造材料に求められる課題の克服に成功した。
トレカ「T800s/3900―2B」プリプレグは、ボーイング社最新鋭の787型機の主翼、胴体、尾翼などの主要構造部材として唯一採用され、2011年就航以来100機以上に納入されている。
787型機は、主要構造部材にCFRPを全面的に適用(構造材に占めるCFRP比率=50%)した世界初の民間航空機で、20%の燃費向上を実現することで、世界中のエアラインから1000機以上の受注を受けるベストセラー機。
同社は、今後開発される次世代航空機へのCFRPの適用、さらには自動車などの産業用途へのCFRP展開を進めていく考え。
2014年03月31日