早川ゴム 放射線廃棄物の発生量低減 耐放射線環境ゴムを実用化

2011年09月15日

ゴムタイムス社

 

 建設・土木資材関連のゴム・樹脂製品の製造・販売を行う早川ゴム㈱(早川雅則社長)は、放射線が発生する環境下で、他のゴム材料には無い優れた耐久性を有する耐放射線環境ゴムを開発・製品化している。

 同製品は大強度陽子加速器研究施設(J-PARC)で主に構造物の耐震止水ジョイント材として使用され、従来使用されている物と比較し同じ照射条件であれば長寿命であり耐久性に優れている。

 今回の研究開発は独立行政法人日本原子力研究開発機構との共同開発事業で、平成18年に発表して以来、データ集積に努めてきたが、今回の震災でゼネコン、プラントメーカー、福島の自治体から問合わせが相次ぎ、同社は8月に同製品の拡販を目的としたプロジェクト「耐放射線環境ゴム推進チーム」(7名)を立ち上げた。

 佐藤和彦東京支店耐放射線環境ゴム推進チームリーダーは「今回の共同開発で様々なデータを取れたことが大きな成果であり、今回を機に積極的に拡販していきたい」と述べた。

 同社は同製品の販売目標1億円を目指していく。

 同製品は既存のゴム材料と比較し耐放射線性能に優れたゴム材料である。これまでの汎用材料の中で最も耐放射線特性が優れているEPDM材(エチレン・プロピレン・ディエン共重合体ゴム)に新しいアイディアに基づく添加剤を加え、放射線吸収線量7MGy超でも弾性体としての機能および形状を維持する汎用のゴム材料を得たもの。

 また一般的には高放射線環境で使用できる材料は、無機材および化学的にベンゼン環構造を有する高価な有機材料程度に限定され、高放射線環境の緩衝材・シール材に汎用のゴム材料適用が可能となれば、コストの面、作業性の面などから大きなメリットが得られる。

 さらに高放射線環境においても汎用ゴム材料が使用可能となれば、原子力施設の広範な分野での使用が考えられる。無機材使用箇所においては設備コストの低減となり、止むを得ず従来型のゴム材を使用している箇所においてはその交換頻度を大幅に下げることによる作業被ばくの低減と、それに伴うコスト低減が期待できる。

 同製品の種類・特徴として、EPDM系100シリーズは機械的強度に優れた材料、EPDM系300シリーズは汎用で適用範囲が広い材料、EPDM系500シリーズは高真空系の材料に適している、BR系700シリーズは2液室温硬化タイプの不定型シール材、ブチル系800シリーズは粘着および水密性に優れた材料、アクリル系900シリーズは耐熱、耐油用途に適している―などがあげられる。

 浅倉和晴東京支店営業開発グループリーダーは「高い放射線環境下で優れた耐久性を有する当社製品は国内メーカーでは初めてであり、日本、中国、アメリカ、欧州へ特許を出願した」と語った。

 同社では今回の福島第一原子力発電所事故においても、その対応、終息に向けて多くの人が日々努力されており、そのような状況の中で、同製品を利用してもらうことにより、復興に少しでも協力できるよう製品化(シート類、パッキン類、液状ゴム等)に取り組んでいる。さらに放射線汚染に苦しんでいる周辺住民の人 達にも汚染物質(土壌、汚泥等)の保管に役立てる製品ラインアップも同時に進めている。

 佐藤同リーダーは「当社製品が少しでも社会貢献として役立ってもらいたい」と述べた。

 同社は今回の事故の早期終息、周辺地区での放射線汚染物質処理などに貢献し、製品の品揃えを急ピッチで進めていく。また今後の原子力業界の発展につながるように活動したいと考えている。

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