カネカは5月16日、日東樹脂工業との共同開発を行う中で、同社独自のポリマー分子設計技術および押出フィルム生産技術により、世界で初めて実用物性を兼ね備えた押出法による「ゼロ・ゼロ複屈折アクリルフィルム」の開発に成功したと発表した。
液晶ディスプレイでは、2大欠点である「色ムラ・カラーシフト」「高消費電力」の改善のため、光学ポリマーフィルム特有の「複屈折」による画質劣化や光量ダウンの改善が求められている。これに対し、慶應義塾大学より、配向複屈折と光弾性複屈折を同時にゼロとする「ゼロ・ゼロ複屈折ポリマー」の基本原理が提案された。同社はこの基本原理に基づき、機械物性などの実用物性とゼロ・ゼロ複屈折の性能を両立できるフィルムの生産の実用化に、生産コストが優位な押出法を用いて成功した。今回開発した同製品の高機能性が今後の4K2K・8K4Kへ向かう高精細高画質・低消費電力の各種ディスプレイの実現に大いに寄与すると考えている。
現在試験生産および実用化に向けた検討が実施されており、同社が2014年度末より、現行の生産ラインの一部改造により、年産能力1千万㎡規模で量産を開始する予定。さらに今後数十億円を投じて、光学フィルム専用のアクリル樹脂生産ラインおよび、フィルム生産ラインの増設を実施、光学アクリルフィルム市場に本格的に参入する予定で、この用途で2016年に売上高200億円を目指す。
また、同フィルムにさらに同社が保有する特殊アクリルゴム技術を付与することで高靱性なアクリルフィルムの試作にも成功しており、これによりの世界最薄厚さ20μのゼロ・ゼロ複屈折アクリルフィルムの製品化にも取り組む予定。
今回発表した商品については、6月1日よりサンディエゴで開催される「SIDディスプレーウイーク2014」にて、新規液晶システム開発中の日東樹脂工業のブース(521)にて紹介される予定。
2014年05月20日