カネカの連結子会社、龍田化学は6月3日、射出成形品への新たな加飾技術として、射出成形と同時に高精度のエンボスと絵柄の付与を可能とした、「エンボス・絵柄同時転写シート」を開発したと発表した。
2月より、成形加工メーカーへの供試を開始している。
射出成形品にエンボスを付与する方法としては、一般的には金型内面にエンボスを施した射出成形金型を用い、溶融樹脂を射出する方法が知られている。しかし、この方法では金型にエッチングや彫刻によりエンボス加工することになり、高精度のエンボスを得ることが困難とされている。またエンボス形状、金型形状により、抜き角制約が発生するなど問題がある。
エンボスと絵柄の両方を射出成形品に付与する方法としては、例えば上記の方法で射出成形品にエンボス加工を施した後に塗装する方法も知られているが、塗装工程、それへの VOC対策が必要になるため、コストと環境対策が課題。更にこの方法により製造される加飾成形品は、エンボスの凹凸面に塗装することになるため、エンボスを高精度に維持することが難しく、意匠性が劣るものになる。
塗装以外で射出成形品に絵柄を付与する方法の一つとして、キャリアシート(PET、ナイロン、OPP、CPP等)の上に絵柄を印刷した「転写箔」を用いた技術が知られている。これは射出成形と同時に絵柄を付与することが可能だが、キャリアシートは平面であるため単独ではエンボス付与ができない。この「転写箔」を用いた方法においてもエンボス付金型を用いればエンボス付与は可能だが、キャリアシートの厚み(30~75μm)があるため、高精度のエンボスを付与することは困難であり、意匠性も劣るものとなる。
今回、同社が開発したシートによる加飾成形品は、射出成形時にシートを金型内面に装着し、溶融樹脂を射出成形することのみで加飾製品が得られるため、更なる塗装が不要であり、かつ金型へのエンボス加工も必要としないためオーダー対応などの小ロットの生産も可能となる。更に様々なエンボスと絵柄を組み合わせることが可能で、射出成形品への加飾表現の多様化を図ることができる。同製品は自動車内装品、家電製品等、射出成形品全般への用途展開を行っていき、2019年に50万㎡/年の販売を見込んでいる。