連載 中国のゴム王・陳嘉庚とアモイ㊤

2014年07月22日

ゴムタイムス社

 故人に導かれアモイへ

 私は旅行業界の駆け出しの頃から長年に渡って、「世界ゴム事情調査団」(ゴムタイムス社主催)のご案内をさせていただき、その中で育てていただきました。

 アメリカ・メキシコ・カナダ・タイ・マレーシア・シンガポール・インドネシアなど、ゴム産業と関連の深い世界各地をご案内をさせていただき、その折、多くの業界の方々のお世話になりました。今さらながら厚く御礼申し上げます。

 これらの旅を通じて、輪ゴム・消しゴム・風船から手術用の手袋・免震装置まで、ゴム無しには現代の我々の生活も社会も無い、ということを教えられました。

 近代産業の代表格である自動車産業や飛行機、機械産業、さらに大好きなスポーツ界においても欠かせないことが分かり、すっかりゴムファンとなってしまいました。

 最初のゴム工場の訪問の印象は忘れられません。ゴムを加工する独特な匂いに辟易となり、ギブアップしそうになりました。

 しかし何回か訪問見学しているうちに慣れたのでしょう、その匂いを嗅ぐとほっとするようになったものです。

 ゴムタイムス社創業者の松浦新七・元社長は、酒豪でかつヘビースモカーでした。口には加えタバコ、左手に次の煙草、右手にはマッチというくらいでした。

 アメリカ研修団の時に、ロスアンゼルス在住の知人とウイスキーのボトルを数本空にして、視察団より一足先に日本に帰国されたことも懐かしい思い出です。

 そんな豪快な方で国際人としてのご活躍もされたことは、業界では承知のことと思います。

 松浦元社長は、よく「アモイ、アモイ」「行ってみたいなあ」とおっしゃっていましたが、その頃は日本と中国の関係が良好でなく、残念ながら、ご希望を叶えてさしあげられませんでした。

 このことが私の記憶の中に「アモイ」という言葉とともに刻まれ、いつか訪れてみたいという夢が自然に膨らんでいったようです。

 それから10数年経った今年の5月のゴールデンウィークに、夢のアモイを訪れることができ、松浦元社長のアモイへの思いの謎が解けたと同時に、大変驚きました。

 何と福建華僑のふるさとして知られるアモイ(福建省)が、世界のゴム産業の原点の1つでもあったからです。

 まさに亡き松浦元社長に導かれたアモイへの道で、一人感動に浸りました。

 もちろんこのことをよくご存じの方は多くいらっしゃるとは思いますが、ゴム産業関連の皆様にアモイについて是非知っていただきたいと思うようになったのです。

インターナショナルヒューマントラベル
代表取締役社長 中鉢泰平

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