JSR 石化系事業の収益悪化

2014年07月29日

ゴムタイムス社

 タイのS-SBR拡販に期待

  JSRの2015年3月期第1四半期連結決算は、多角化事業の販売拡大で売上高は960億6900万円で前年同期比4・7%増の増収となったが、営業利益は石油化学系事業の製品市況の悪化及び販売数量減少により81億3100万円、同12・7%減の減益となった。

  エラストマー事業は合成ゴムの需要の約6割を占める国内自動車タイヤ生産が4~5月(JATMA統計)でマイナス2%と低水準であったことに加え、3月末の出荷増による反動もあり、合成ゴム販売数量が前年同期比4%減となり、エラストマー事業の売上高は462億2100万円、同2%減となった。

  営業利益は販売数量減(4~5億円)に加え、在庫の受け払い差による製品評価額(10数億円)、ブタジエン市況の下落による製品市況の悪化が響き、22億2300万円、同53%減の減収減益となった。合成樹脂事業は一部価格修正が寄与し、売上高は132億4400万円、同4%増となったが、営業利益は原料価格の上昇により採算が悪化し4億3000万円、同52%減と前年同期を下回った。

 多角化事業は半導体材料(同32%増)やFPD材料(同7%増)の販売が堅調であったことで、売上高は366億400万円、同14・6%増、営業利益は販売数量増により54億7600万円、同48・2%増の大幅増益となった。

 エラストマー事業の第2四半期以降の業績見通しについては、タイのS-SBR新工場の本格貢献を含め数量拡大で収益改善を見込んでおり、「タイの新工場ではキャパシティ5万tの70%をアジア圏に販売する前提で、当期の予算に織り込んでおり、このうちかなりの部分が下期に販売される」(平野勇人取締役執行役員)という。また、国内タイヤ生産はまだ回復していないが、「海外補修用タイヤの需要は、4~6月でみると、中国では5~10%、欧州3%、アメリカ5%の伸びで推移しており、これらを勘案すると必ず生産は戻ってくる」とエラストマーの売上拡大を見込んでいる。

 合成ゴムの売値に影響を与えるブタジエン市況は、足元、アジアスポット価格で1600ドル弱/tと少し戻り始めているが、「過去の実績で営業利益率が7%台の悪い時はブタジエン価格は1500ドル/tを切っている。営業利益率12%台の時は2000ドル/tを超えていた」とし、第2四半期以降はこの分が収益に貢献するとみており、石化系事業の通期売上高2700億円、営業利益220億円の予想を変えていない。

 一方、多角化事業では今後も最先端半導体材料を中心に引き続き好調を維持するものと見込んでおり、通期売上高1400億円、営業利益160億円の増収増益を予想している。

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