高機能化進むシリコーンゴム
自動車、電気・電子分野で新グレード
シリコーンゴム各社は今後の成長分野である環境、エネルギー関連分野へ軸足をシフト、成長事業分野に対応した新グレードを相次ぎ投入する一方、原材料価格の高騰に対応した製品価格の値上げに踏み切った。
信越化学工業はシリコーン製品の主原料である金属ケイ素が主要生産地である中国での電力料金の上昇などにより生産コストが増加し、為替の影響も重なり価格が高騰しているのに対応、2014年6月出荷分より、シリコーン全製品を対象に国内外で10%の値上げを打ち出した。
また、旭化成ワッカーシリコーンも為替相場の円安・ドル高・ユーロ高傾向の影響もあり、主原料および原油価格の上昇に伴う製造用エネルギーや輸送費の値上がりによって採算が悪化しているとし、2014年7月1日受注分より製品価格を8%値上げした。
一方、メーカー各社はシリコーン市場が拡大している中国市場での生産拠点の充実を図っており、信越化学工業の中国プラント「信越有机硅(南通)有限公司」が本格稼働を開始しているほか、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズの新安化工集団社と合弁による年産5万㌧能力の新工場、ダウコーニングとドイツ・ワッカーケミー社との合弁による張家港のシロキサン工場も本稼働しており、中国市場での販売競争も激化しつつある。
耐熱性、耐寒性有するシリコーンゴム
シリコーンはケイ石を還元して金属ケイ素「シリコン(Silicon)」を作り、 そのシリコンとシランを加水分解して得られるシロキサンを様々に加工することでできる材料。その分子構造からさまざまな特長を兼ね備えており、配合要素を変えたり、架橋技術を駆使することで高度な機能を持ったオイル系製品、シリコーンゴム、レジン系製品、シラン系製品として生まれ変わる。
シリコーンゴムは加硫形態により熱加硫型シリコーンゴム(HVR)と室温硬化型シリコーンゴム(RTV)があり、コンパウンドの粘性状態により熱加硫型シリコーンゴムと硬化前の状態が液状、ペースト状の液状シリコーンゴムに大別されるが、近年、液状シリコーンゴムの伸びが高い。
一般の有機材料とは異なり、優れた耐候性、耐熱性、耐寒性、電気特性を有するシリコーンゴムは、エンジン回り・駆動系の各種ガスケットのシール、オイルシール、Oリング、ダイヤフラム、コネクター、ターボチャージャーホース、各種耐熱ホース、等速ジョイントホースなどの自動車関連ゴム部品での自動車部品の高性能要求に応える素材として需要が拡大している。また、耐熱・電気絶縁、難燃を必要とするゴム成形品、キーパット、ゴム被覆電線、ゴムチューブ、各種電磁波シールド用成形部品などの電気・電子分野、携帯電話、パソコン、液晶テレビなどのバックライト、電子看板、街路灯、自動車のヘッドランプなどのLED関連機器類のシール材は輝度の向上や技術の進歩に合わせたシリコーンゴム各社の新グレード投入も活発だ。ほ乳ビンの乳首、食品容器のパッキン、食品用チューブ、キッチン用品素材などの食品・衛生用品分野でも需要のすそ野が広がっている。