帝人は9月29日、L―BSF(ローカルバックサーフェスフィールド)型の高変換効率太陽電池を製造するための材料となる「NanoGramシリコンペースト」、およびその素材性能を最大限に引き出すための加工技術を世界で初めて開発したと発表した。
同社は米国の子会社でナノ材料開発に優れた実績を持つナノグラム・コーポレーション(以下「ナノグラム社」)とプリンタブルエレクトロニクス材料の開発に取り組んでいたが、このたび同社との共同により、同シリコンペーストの開発に至った。
この開発成果については、第75回応用物理学会 秋季学術講演(9月17日~20日、於.札幌)、および国際学会 EUPVSEC(9月23日~26日、於.オランダ・アムステルダム、フラウンホーファーISEと共同)において学術発表を行った。
同社は、この開発成果を太陽電池の高効率化に向けたソリューションとして提供することとし、今後、太陽電池メーカーへのマーケティング活動を強化していく。
太陽電池市場は、2020年に2・7兆円規模の市場に成長すると予想されているが、現在、市場からは、より効率的な発電が可能な変換効率の高い太陽電池の開発が求められている。中でも、従来の汎用的なシリコン結晶系太陽電池の裏面電極を改良することで高い変換効率が得られる新しいタイプの太陽電池、L―BSF型太陽電池の開発が近年活発になってきている。
こうした中、同社は、米国子会社のナノグラム社と共同開発を進めてきたプリンタブルエレクトロニクス材料「NanoGramシリコンペースト」が、このL-BSF型太陽電池の高効率化に貢献できる材料であることを発見し、製品改良に取り組んできた。また、製品を改良するだけでなく、自社および社外の研究機関とともに、その製品性能を最大限に発揮するための加工技術の開発にも取り組んできた。
近年開発が活発化しているL―BSF型太陽電池は、裏面に絶縁層(パッシベーション層)を持ち、「不純物拡散層」*が裏面の電極とその真下に部分的に配置されることにより、シリコンウエハ(太陽電池基板)内で発生する電気を効率良く集められる構造になっている。同社は、L―BSF型太陽電池の高効率を実現するために重要な「不純物拡散層」の形成に「NanoGramシリコンナノ粒子」が極めて有効な材料であることを突き止め、「不純物拡散層」の形成に必要なホウ素やリンなどの不純物を内包する直径20ナノメートル程度のシリコンナノ粒子をペースト加工して、高効率太陽電池用の「NanoGramシリコンペースト」を開発した。この「NanoGramシリコンペースト」をシリコンウエハに印刷し、加熱することで高性能の「不純物拡散層」を形成することができ、それにより、変換効率の高いL―BSF型太陽電池の製造が可能となる。
さらに同社は、この「不純物拡散層」を形成したいところに印刷するためのスクリーン印刷技術と、印刷したペーストを高温でシリコンウエハ内に拡散させるためのレーザー加工技術を開発した。
これらの開発により、L―BSF型太陽電池の変換効率が0・5%向上することを確認。また、著名な研究機関であるドイツのフラウンホーファー ISEと共同開発した6―inchサイズの太陽電池においても、変換効率向上に寄与することを実証した。
同社は高効率太陽電池用途に向けて、「NanoGramシリコンペースト」のマーケティング活動、および太陽電池メーカーとの共同開発活動を本格的に展開することとし、太陽電池メーカーの早期採用を推進するとともに、新たな高効率太陽電池の商業生産化をサポートしていく。また、太陽電池用途に続き、将来的には同社グループのプリンタブルエレクトロニクス材料として、半導体分野での活用も視野に用途開発を継続していく。