住友化学は10月3日、PID現象を抑制する特性と、高い透明性を併せ持つ、これまでにない太陽電池封止シート用EVA(エチレン―酢酸ビニル共重合樹脂)「スミテート」の新規グレードを開発したと発表した。
太陽光発電の導入量が全世界で増加し続けている中、メガソーラーと呼ばれる出力1メガワット以上の大規模発電所の一部では、太陽電池の出力が大幅に低下するPID現象が顕在化し、その対策が求められている。これまで、太陽電池封止シート用EVAにおいては、EVAの酢酸ビニル濃度(以下、VA濃度)を低下させることなどでPID現象を抑制してきたが、一方で封止シート自体の透明性の低下が発電効率に悪影響を及ぼすことが課題となっていた。
今回、同社が開発した「スミテート」新規グレードは、独自技術によって、PID現象の原因である封止シート中のイオンの移動を抑えることを可能としたもの。外部評価機関によるPID促進テストでは、現行同社EVAを使用した場合には太陽電池の発電量の低下率が94%であるのに比べ、今回の新規グレードを使用した場合には発電量の低下率が2%へと大幅に改善する結果が得られている。さらに、この技術を高VA濃度のEVAに適用することでPID現象の抑制と高い透明性を両立でき、発電効率の向上にも寄与。これらの特長から、高い発電効率を要求されるメガソーラー向けに、特に効果を発揮する。
同社は、太陽電池封止シート用材料市場で、品質の高いEVA「スミテート」を長年に渡り安定的に提供し、高く評価されてきた。今回、新規グレードを開発したことで、そのラインナップを拡充する。さらに、長期耐久性に優れ、酸発生による種々のモジュールトラブルを抑制できる非EVA材料の「アクリフト」(EMMA)の展開も進めており、多様化する顧客のニーズに幅広く応え、事業拡大を目指す。これらの事業を通じて、地球環境負荷の低減や次世代クリーンエネルギーの普及などに寄与することで、持続可能な社会の発展に貢献していく方針。