BASFは10月17日、車両外装に非塗装で広範囲に使用できるように素材を最適化することに成功し、自動車メーカーのPSA プジョー・シトロエン社が、シトロエン「C4 カクタス」に装備されたエアーバンプの表皮材に、新グレードのTPU「エラストラン AC 55D10 HPM」を採用したと発表した。
エアーバンプは、コントラストのある配色で車両の側面、前面、後面に装着された大きなエアクッションバンパーであり、衝撃や傷つきから車両外装を保護するだけでなく、個性的な外観を演出している。この世界初のTPUの製造に成功するまでには、フランスの自動車メーカー、スイスに本社を置く素材メーカーのレーハウ社、そしてBASFの長年にわたる努力があった。
レーハウ社が側面用のエアーバンプを製造し、フランスのフォルシア社が前面と後面用のバンパーを製造している。
「エラストランHPM」は、設計の自由度が高く、長期耐久性に優れていることに加え、心地よい触感と高級感あふれる外観という特長を兼ね備えている。この新しい素材は、従来のTPUが持っている高引張強さ、耐摩耗性、弾性、低温での耐衝撃性、耐薬品性に優れているという特性と、薄肉品でありながら優れた表面性をも維持し、傷つきにくく、耐候性・耐紫外線性に優れ、また手入れが簡単であり、120~150℃の高温で使用可能、という新しい特性が見事に結びついている。
このような特性があることから、エラストランは、衝撃を吸収するエアーバンプの表面に使用するのには理想的な素材であり、C4 カクタスをグラフィックアートのようなデザインに仕上げている。射出成形タイプのエラストランHPMは、ポリカーボネートおよびアクリロニトリル―ブタジエン―スチレン(ABS)樹脂の基材に装着され、柔軟性のある空洞を形成し、高い弾力性を生み出している。この構造部材は金属の車台にしっかりと取り付けられる。HPMグレードは装着性に優れているため、ポリプロピレンなど従来のトリム材では不可能だった強固な組み立てを可能にする。
エラストランHPM はそれ自体着色することができるため、エアーバンプには塗装の必要がない。そのため、特別なメンテナンスは不要であり、事故時の修理費用を削減することができる。バンパーには4色のカラーバリエーション(ブラック、ブラウン、ライトグレー、ダークグレー)があり、同社のコーティングス事業本部が提供する自動車塗料、プライマー、透明塗料と組み合わせることで、独自のデザインを楽しむことができる。
同社は、新しいエラストランHPMにおいて優れた加工特性の開発も行った。広い加工条件幅で素材を射出成形できるだけでなく、サイクル時間を従来のTPUの半分に短縮。また流動性も高く、表面の品質を損なうことなく1・5~1・8mmの薄肉品の製造も可能。
これまで自動車用途には、エンジン部品と車両内装(ドアノブ、ギアノブ、カップホルダーなど)やケーブル被膜材にエラストランが使用されてきた。BASFのTPUは、射出成形、押出成形、ブロー成形が可能となっている。