東レは12月10日、イタリアのサーティ社から、同社の欧州における炭素繊維織物・プリプレグ事業を買収することに基本合意したと発表した。
来年1月に、サーティ社が持つ工場(所在地=ミラノ県レニャーノ)の資産を引き継ぎ、東レの100%子会社コンポジット・マテリアルズ(イタリア。略称=CIT)として事業を開始する。
同社は現在、欧州では、フランスの子会社東レカーボンファイバーズヨーロッパ (CFE)においてPAN(ポリアクリロニトリル)プリカーサ(焼成前原糸)から一貫で炭素繊維の製造販売事業を行っているほか、ドイツの子会社EACC社およびACE社において炭素繊維織物を使用したCFRP部品事業を展開している。今回の事業買収により、川中にあたる中間基材事業拠点を手に入れることで一貫した自社サプライチェーンを確立でき、同社グループの欧州における炭素繊維複合材料事業の基盤が一層強化されることになる。
サーティ社の炭素繊維織物・プリプレグ事業は、CFEをはじめとする同社グループ炭素繊維の顧客として、両社の強固な協力関係の下、近年急速に事業を拡大してきた。特に、高級自動車分野では、後発でありながらも、顧客要求にスピーディに対応することで市場から高い評価を得ている。今後、同社グループの持つ技術をCITに移転するとともに、グローバル販売チャネルを活かして、欧州地域に留まらない事業拡大を目指していくことになる。
同社グループでは、炭素繊維複合材料事業を戦略的拡大事業と位置づけ、4月からスタートした中期経営課題「プロジェクト AP―G 2016」において、事業買収も含めた積極的な経営資源の投入による飛躍的な事業拡大を計画している。今回の事業買収はその計画に沿ったもので、今後ともこうしたサプライチェーン強化による事業の高度化と併せ、炭素繊維複合材料事業の収益拡大を実現していく考えだ。