経験則という言葉をモノ作りの現場ではあまり耳にすることはない。仮に聞いたとしても、ただ単に受け売り的に知った言葉を使っているのであり、その深い意味を知っているとは思えない。
辞書によると、経験則とは「経験的事実に基づいて得られた法則」と説明されている。
辞書だから解説調であるのは仕方がないが、如何にも堅苦しい言い回しであり、具体性に欠け、直ぐには何を言っているのか理解できない。
その正否はさておき、経験的な知識で経験則を言うならば、同じことを何回も何回も経験し、微妙な調整をしながら、理屈ではなく身体で覚えてしまう技能の類を言うのである。
時間は掛かるが、知識がなくても、数多くの試行錯誤による失敗の経験を経て技能が生まれてきたのである。
だから経験的に得られた技能は、決定的ではないが合理的な理由があって受け継がれて来ているので、当面はそれらの技能が問題視されることはないのである。
俗に、この経験則はノウハウですから、と言って対外的には秘密にしたがるのも無理からぬことである。ゴム配合などは、典型的な社外秘のノウハウである。
だから一言で経験則ですと言われてしまうと、その件については折角創り上げたものだし、説明するのが難しいから詳しく聞いてくれるなと、拒否されるのも止むを得ないのである。
確かに、技能についての内容を問いかけられた時、その内容についての説明が曖昧であることが多く、論理的に説明できても、理論的でない場合が見受けられるのである。
ノウハウですと言われた方がまだしも納得できそうな答え方であるし、少なくともその技能の内容を理解しているはずである、と思えるのである。
去年の初め頃、四日市のある工場で熱交換器の爆発事故が起こり、5人が死亡し、多数の負傷者が出たとのニュースを聞いて、疑問に思ったことがあるので見当違いと言われるかもしれないが、所見を述べてみたい。
爆発した水冷熱交換器は7年10ヵ月月洗浄していなかったとのことだが、何故そんな長期間洗浄しなくても生産に支障をきたさなかったのであろうか。
本来はトリクロロシラン(SiHCL3)などの残留物を取り除くため、定期的に洗浄しなければならなかったはず、と報道では読み取れたのである。しかし、洗浄マニュアルはあるものの、