クラレ 2015年度入社式を開催

2015年04月01日

ゴムタイムス社

 クラレは2015年度入社式を開催した。

 新入社員に対して、伊藤正明社長のあいさつは以下の通り。

 皆さんは、今日からクラレグループの一員として社会人生活をスタートされました。私も35年前の1980年3月31日、皆さんと同じようにクラレパーソンとしてスタートしました。当時の社長のご都合で一日早い入社式だったのですが、そんなことで一日損をしたように思う、極めて幼稚な社会人1年生でした。また私は今年の1月1日に社長になりましたので、未だ皆さんと同じ1年坊主であります。皆さんと伴にしっかり成長して行きたいと思っていますので、宜しくお願いします。社長としては1年生ですが、クラレマンとしての35年の経験を踏まえ、本日は皆さんの今後の大いなる成長を願って、皆さんが仕事に取り組む際の心構えについて4つ述べたいと思います。

 まず1番目は「よく聞く」ということです。

 私は45歳から2年間、中国に駐在して縫製会社の設立と工場立ち上げをやりましたが、本当に苦労しましたし勉強になりました。私はポリエステル長繊維の技術者としてクラレマン生活をスタートし、以後43歳までポリエステル繊維の開発・生産管理の仕事をしていました。その後クラレトレーディングに出向して2年間経営企画の仕事をしていました。そして45歳になって、縫製の「ほ」の字も知らないような状態で、縫製会社の設立と工場立ち上げをやったのです。更には中国での会社設立はクラレグループでも初めての経験でしたので、とにかく皆さんに教えてもらうしかありません。中国のたくさんの役所・税関・銀行・電力会社や建築会社、そして縫製の取引先様・ミシン会社・設備企業・社内の縫製担当者・コンサルタント会社など、周りの全ての方々に頭を下げて教えてもらい、実際やってみて問題にぶち当たると自分なりに考えて、それからまた教えてもらうという繰り返しでした。この経験を通して私は、知らないことを聞くのはまったく恥ずかしくなくなりました。また、率直に頭を下げて教えを請えば、大多数の人はそれに応えて、親切に教えてくれるということを学びました。「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」という言葉もあります。皆様もこのことを心がけてください。

 次に2番目は「仕事に取り掛かる前から、出来ないと言わない」ということです。

 私は食べ物に関する子供の躾で、初めて出された食べ物は必ず一度は口にする、舐めるだけでも良いから味を見るように教えました。「お前たちは生まれてから何年も過ぎていないのだから、始めて食べる物の方が多いのだ。だから、お前たちのことを思って作ってくれた食事は、まず口に入れてみなさい!口に入れて自分に合わなければ、ゴメンナサイと言って、紙に吐き出しなさい。口にする前からエエー!とかイヤだとか言うのではない」そう言って、少しずつ食べられる物を増やしていきました。私自身も中国に駐在した時に、現地の中国人から色々な食べ物を進められました。その時に私は「トライしてみるけど、初めての食べ物だし自分は日本人なので、口に合わずに出すかもしれない。その時はゴメンナサイと言って吐き出します。でもトライはします」といつも断ってから、食べました。その結果、食べられない物は無かったですが・・・

 仕事も一緒です。皆さんに与えられる仕事は皆さんの能力や仕事量をみながら、上司・先輩が用意してくれるのです。それを自分が出来るとか出来ないとか判断できるだけの経験は皆さんにはないし、そんなことを考える必要は無いのです。兎に角、精一杯取り組んでみる。分からないことは周囲の皆さんに聞きながら、必死でやってみる、その姿勢が大事です。これは無理だと判断したら、上司・先輩が助けてくれます。或いは、もう少し他で経験を積んでからの方がよいとなれば、仕事の順序を入れ替えてくれます。また、あなた方がこの仕事に向いていないとなったら、配置転換も考えてくれるでしょう。でも、自分自身は与えられた仕事から逃げずに、精一杯に取り組む。言われた瞬間は大変な仕事だと思ったけど、少しやり始めたら意外と出来たという経験をすることが出来たら、しめたものです。言われた仕事はとにかく出来るだけ早く着手してみることが大事です。取り組む前から悩んで手を拱いていると、ドンドン大きな難しい仕事に見えてくるのです。

 3番目は「失敗を隠すな。失敗から逃げるな」ということです。

 野球でゴロを捕り損なった内野手が必死でボールを追いかけたり、サッカーでボールを敵方に奪われた選手が取り返えそうと必死に追いかけているのを見たことがあると思います。これは、プレーを早く止めてランナーがさらに進塁したり点が入ったりしないように、或いは失点に繋がる危機的な状況にならないように、損失をそこで食い止めるというプレーです。損失拡大の防止を目指して、必死になっているのです。
 皆さんもこれから仕事をして行く上で、沢山のエラー・失敗をすると思います。経験が無かったり、十分な経験を積んでいないのですから、失敗することはある意味仕方がないと思います。しかし、失敗した時にそれ以上損失が拡大しないように、損失を防ぐ対策を必死でやると同時に、出来るだけ早く上司・先輩に報告することが大切です。失敗の挽回でも経験の少ない皆さんよりは、数多く失敗を経験してきた上司・先輩の方が早くて有効な対策案の知恵は沢山あるはずです。

 もし失敗しても、それから逃げずに必死に挽回しようと頑張ったり、素直にアドバイスに耳を傾けて取り組んだりしている姿を見た上司や先輩は却って皆さんの姿勢を好感して、色々と教えてくれたり助けてくれたりするのです。そしてそんな事を通して、皆さんに対する信頼感が出来てくるのです。

 4番目は「小さな仕事を大切に」ということです「そんな詰まらないことをするためにこの会社にはいったのではない」というようなことを言う若い人が居ました。しかしそれは大きな間違いです。

 「小さな仕事もチャンと出来ない人に大きな仕事を頼むはずがないのです」小さな仕事であっても誠実に取り組んでやり遂げる、この積み重ねの過程で信頼を勝ち取ることが出来れば、少しずつ大きな仕事を任せてもらえるようになるのです。初めは雑用と思われるような小さな仕事も多いでしょうが、決しておろそかにせずに取り組んで下さい。

 4つの心構えをお話しました。

 「よく聞く」ということ

 「仕事に取り掛かる前から、出来ないと言わない」ということ

 「失敗を隠すな。失敗から逃げるな」ということ

 「小さな仕事を大切に」ということ

 この4点は皆さん、肝に銘じて実践して頂きたいと思います。

 最後にもう一つお話をしておきます。

 我々は生活の糧を得るために働いていますが、これをもっと高尚に言うと、我々は幸せになるために、クラレグループで働いているのだと思います。その会社で、病気であれ怪我であれ、不幸になるようなことが有ってはならないと思います。私はクラレグループを、そういうことが無い、そういうことが起こらない職場・会社にしたいと考えています。

 皆さんは入社したばかりなので、まずは自分が怪我をしないこと、健康を損ねないことが第一です。その上で、事業所での実習期間の間、クラレグループが取り組んでいる保安防災活動・安全活動について、事業所長や部長以下、従業員の皆さんがどの様に活動しているか、しっかり見て頂きたい。そしてその上で安心・安全な職場を作り上げるためには、何をどうすればよいか、意識を高く持って考え続けて頂きたいと思います。クラレはメーカーです。メーカーは仕入れた原材料を反応させたり加工したりして製品に仕上げ、お客様に納入してお金と信頼を頂戴しています。そう言う意味で企業活動の一番大事な根本の生産活動を担う事業所で実習することは大変有意義だと思います。この実習を通して安全活動だけでなく色々な事柄に目を向けて、自分の頭でよく考え、一日も早く立派なクラレパーソンとして自立できるよう頑張って下さい。

 以上、皆さんの入社に際しての私の挨拶と激励の言葉と致します。

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