信越化学工業は6月22日、産業技術総合研究所(産総研)太陽光発電研究センターと、同社が開発した太陽電池モジュール用シリコーン封止材を使った太陽電池モジュールの評価試験を行い、耐久性やPID現象による出力低下を抑制する効果を確認したと発表した。
同センターのモジュール信頼性チームの原浩二郎研究チーム付らとともに、産総研九州センター(佐賀県鳥栖市)に設置した環境試験機や測定装置を使って試験を実施。新たに開発したシリコーン封止材を用いた太陽電池モジュールの高温高湿試験と温度サイクル試験を行った結果、優れた耐久性を示した。
また、この封止材を用いた単結晶n型シリコン太陽電池モジュールの評価試験を行ったところ、モジュールに高電圧がかかって出力が大幅に低下してしまう、PID現象による出力低下を抑制する効果が確認された。
この封止材は、従来のシリコーンとは異なるシート状で、太陽電池モジュールの製造工程に使用される一般的な設備で使用できる。今後、単結晶n型シリコン太陽電池モジュールをはじめ、厳しい環境下での太陽光発電システムの導入拡大や長期信頼性向上への貢献が期待される。
詳細は6月23、24日につくば国際会議場(茨城県つくば市)で開催される「AIST太陽光発電研究成果報告会2015」で発表する。
太陽光発電システムは、メガソーラーなどの大規模発電や50kW未満の小規模発電、住宅用システムなど、様々な規模・形態での導入が拡大している。近年では、太陽光発電システムを海上や沿岸部などに設置するケースもあり、従来よりも厳しい環境下での信頼性が求められている。
また、太陽電池セルの発電効率競争に伴い、単結晶n型シリコンセルを用いた高効率太陽電池モジュールの導入が、住宅用システムを中心に増えているため、PID現象への耐性を評価する必要性が増していた。
産総研では、太陽電池モジュールの劣化メカニズムの解明や、長期信頼性に優れた太陽電池モジュール用の各種材料の開発を目的に、09年10月に高信頼性太陽電池モジュール開発・評価コンソーシアムを設立し、民間企業などと連携して昨年3月まで研究開発を実施。
信越化学は、12年1月から同コンソーシアムに参画し、シリコーン封止材の研究開発を行ってきた。また両者は昨年4月から今年4月まで、産総研九州センターの設備を使い、シリコーン封止材を使用した実用サイズの太陽電池モジュールを作製し、信頼性を評価した。
さらにPID試験(AIST法)により、シリコーン封止材を用いた単結晶n型シリコン太陽電池モジュールのPID耐性を評価した。
今後はシリコーン封止材シート量産化の促進、n型シリコン太陽電池モジュールのPID現象発生のメカニズムと、シリコーン封止材による抑制メカニズムの解明を行う。