クレハエラストマー㈱の今期の第1四半期業績は、計画予算には届かなかったが、前年同期実績との対比では2ケタ近くの伸びで推移したという。
「関東や中部地区の需要は低迷したものの震災の直接的な被害を受けなかった関西地区は特需的な要素がみられ、需要の一部は関東地区にも流れたようだ。一時的には一部の在庫が品薄になったが、津・亀山工場をフル稼動させるなど得意先への安定供給のため増産対応した。これにより原材料、配合薬品類の供給不安に対する在庫積み増しとシートメーカー値上げ前の買い込みも重なり、出荷を伸ばす結果となった」(同社)と状況を分析する。
シートの今後の需要見通しについては厳しい見方をしている。「震災関連の緊急的な復興需要が一段落し、現在は減少基調で推移している。今後、明るい気兆しの要素が見当たらず、先行きは不透明感が強い」としている。
同社は天然並板を製造しておらず、他社とは異なるフィールドで事業展開を進めているが、最近の円高傾向は海外事業を推進するうえでの大きな障害となり、より一層のコストダウンと品質アップが海外品との競争に勝つための要素になるとしている。
新製品開発、上市では吸音・制振材「ヴィブラン」シリーズの拡充を図ったほか、放熱シート「クレクール」5品種を新たにシリーズ化するなどニーズに応えて積極展開している。
「ヴィブラン」のメカニズムは音・振動・衝撃などのエネルギーを熱エネルギーに変えて抑えるもので、ゴムや樹脂、フォームなど様々な素材で供給でき、クレハエラストマーでは極薄、長尺加工にも対応し、幅広い用途、コストダウンに寄与するものと期待している。
防振用途に適した「Gシリーズ」、制振用途に適した「Sシリーズ(制振シート)」、吸音目的の「Fシリーズ(吸音フォーム)」を揃えた。これに加えて一部遮音・吸音、制振分野にわたって性能を発揮する「Lシリーズ(KEダンパー)」がある。
一方、放熱ゴムシート「クレクール」は、シリコーンゴムを素材とした低硬度の放熱シート。高い熱伝導率に加え、粘着性と柔軟性により、発熱体に密着し優れた放熱効果を発揮する。電子デバイスやLEDの熱対策用途として最適。今回、製造可能厚み0・1㍉~22㍉まで、熱伝導率が異なる5種類のグレードをラインアップした。
下期の事業展開については、これら新商品を展示会や商品説明会などの機会を利用して拡販を推進するとともに、海外販売戦略を見直して現在の海外依存度を高める方針だ。
これにより、シート事業は拡大する海外市場に経営資源を投入、5年後にはシート事業の海外依存度は現在の2倍になると予測している。
2011年09月21日