横浜ゴムは9月3日、理化学研究所(理研)、日本ゼオンとの共同研究により、バイオマス(生物資源)からイソプレンを合成することに成功したと発表した。
イソプレンは自動車タイヤなどの原料として使われる合成ゴム(IR=ポリイソプレンゴム)の原料として使用される。現在、イソプレンはナフサ熱分解の副生成物として工業的に生産されているが、新技術の開発によって、今後石油への依存度が低減でき、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素削減に貢献できる。
横浜ゴム、理研、日本ゼオンは、2013年からバイオマスから合成ゴムを作りだす共同研究を進めてきた。研究に当っては理研・環境資源科学研究センター(CSRS)が保有する細胞設計技術、植物科学技術が活用された。
この結果、「in silico代謝設計技術」(コンピュータで微生物の代謝経路をゲノムスケールで設計する技術)を用いて人工代謝経路を設計し、イソプレンの新規合成法を発見するに至った。今後、2020年代前半を目標に実用化を目指す計画。ポリイソプレンゴムは化学構造が天然ゴムに類似することから合成天然ゴムとも呼ばれる。
このため新技術の開発は、化石燃料使用の削減だけでなく、気象条件によって生産高が変動する天然ゴムの補填原料としても期待できる。
理研は日本で唯一の自然科学の総合研究所。理研・CSRSでは持続的社会の実現に向け、生物機能分野では特に植物・微生物の機能を有効活用する基礎研究を推進している。日本ゼオンは合成ゴムの大手メーカー。重合触媒技術、合成ゴムの機能化などの研究に力を入れている。横浜ゴムはタイヤ・ゴム製品の総合メーカー。カーボンニュートラル(排出される二酸化炭素=吸収される二酸化炭素)な植物由来のバイオマスを活用する研究に積極的に取り組んでいる。