ドイツの特殊化学品メーカーのランクセス(LANXESS)とサウジアラビアの国営石油会社のサウジアラムコ社は、9月22日、合成ゴムの合弁会社を設立することで合意書に調印した。ランクセスとサウジアラムコ社の子会社であるアラムコ・ オーバーシーズ・カンパニー社は、出資比率各50%で合弁会社(2014年度売上高:約30億ユーロ)を設立する。
世界最大の合成ゴムメーカーと世界最大の石油およびエネルギー供給事業者が共に、多岐に渡る戦略的パートナーシップを構築することになる。
ランクセスは、この合弁会社に9カ国20ケ所の製造施設と約3,700名の従業員を擁する、タイヤ&スペシャリティーラバーズ(TSR)とハイパフォーマンスエラストマーズ(HPE)の両ビジネスユニット(管理部門含む)の合成ゴム事業を移管する。この移管には債務およびその他の財務上の負債を控除の後、サウジアラムコ社は、持ち分の50%となる約12億ユーロを出資。
これにより、合弁会社の市場価値総額は27億5,000万ユーロとなる。この取引には、関係各国の独占禁止法規制当局の承認を得ることが必要となり、2016年度上半期には手続きが完了する見通し。
ランクセスは、合弁会社設立によるサウジアラムコ社からの出資金額のうち、約4億ユーロを、優位性を持ち、景気の変動を受けにくい部門であるアドバンスト中間体部門および、パフォーマンスケミカルズ部門の成長に投資する。さらに、債務返済に約4億ユーロを充当し、自社株買戻プログラムに約2億ユーロを充当する予定でいる。
合弁会社は、本拠地をオランダに置くホールディング会社によって運営され、CEOはランクセス側から、CFOはアラムコ・オーバーシーズ・カンパニー社側から任命され、経営陣は両社より同数ずつ選任。この合弁会社の業績はランクセスグループの連結決算に組み込まれる。
この合弁会社の設立により、ランクセスは、3段階の事業再構築プログラムにおける第3段階に着手することになり、「事業再構築プログラムの着手開始から約1年が経過した現在、ランクセスは、新たな戦略的なスタート地点に立っている。これまでに管理部門の効率化および製造体制とプロセスの一層の合理化を図ってきたが、ゴム事業におけるこの合弁会社によって、事業再構築の最も重要な段階を最適なパートナーと共に短期間で実施していく。これらの取り組みが、財務面での余裕をもたらし、予想よりも早期にランクセスを成長軌道に戻すことができるでしょう」(CEO・マティアス・ツァハト氏)と述べている。
サウジアラムコ社は、この合弁会社に対し中期的に、戦略的に重要な原料を、優位性のある価格で安定的に提供することとなり、「新たな収益源を獲得するだけでなく、タイヤおよび自動車部品製造業などの大量生産分野において、サウジアラビア王国および中近東地域の経済の成長と多様化の機会を促進する。これらの大量生産分野は、高利益率、高付加価値の化学製品が決め手となる」(シニアバイスプレジデント・ダウンストリーム担当、アブドゥラフマン・アルウハイブ)氏と述べている。