上島製作所 創業100周年 高分子材料の未来を築く
最先端・高分子材料試験機で グローバルニッチトップへ
高分子材料の物理試験器総合メーカー、上島製作所が創業100周年を迎えた。オンリーワン製品によりグローバルニッチトップカンパニーを目指す佐藤親弘社長に今後の事業展開を聞いた。
◆創立100周年を迎えた感想を。
当社は1916年に試験機を製造販売して以来、試験機器メーカーとして業界を牽引。タイヤメーカーとの共同開発により、タイヤ・ゴム物性試験のためのさまざまな試験機を国内外に送り出すことが出来、これらが当社の主力製品となり、今日の上島製作所を支えている。
機械、電子、計測機器の製造メーカー、㈱日本アプライドテクノロジに組み込まれた後、2015年4月に新生、上島製作所として再出発した。今後は、さらなる発展をするべくユーザーニーズと独自な発想を基に最先端高分子設計材料試験機の開発と製造に力を尽くしていく。
◆今後の事業展開は。
10年先をみると、エネルギー変革、燃料電池車の普及、バイオマテリアルの拡大など需要環境の大きな変化が予想される。
この中で信頼性の高い試験機をいかに各産業界に提供し続けることができるかが重要課題となる。
ゴム産業の主力製品であるタイヤは欧州のラべリング制度をはじめ各種環境規制の強化が進み、より高性能なタイヤの技術開発競争が激化している。
当社はタイヤが必要とする性能試験を材料で追いかける動的試験機(摩耗、摩擦、粘弾性、疲労)をメインに展開している。いずれもオンリーワン製品であり、狭い世界だが、グローバルニッチトップカンパニーを目指していきたい。
◆グローバル事業拡大の課題は。
当社は近年、海外事業の拡大に注力しているが、親会社の商号を海外での知名度が高い上島製作所に変更したのもその一環だ。
現在、韓国、台湾、中国に代理店を置き、試験機のメンテナンスの充実を図っているが、さらにインドネシア、マレーシア、ベトナムでの事業展開を考えている。海外のタイヤメーカーの納入先からグローバルに横展開が進んでおり、輸出比率は年々拡大され50%台に達している。
◆一方、国内での拡販策は。
日本アプライドテクノロジが保有するビジネスで、まだまだ拡販できる製品がある。その一つが液体窒素を使わずマイナス120度の空気が造れる「ドライ冷気発生装置」(THERMO JETTER)。食品(冷凍、冷蔵食品の商品開発)、医療(生体材料の保存)、高分子材料向けに販売を開始しており、実績も増大している。
また、当社が独自開発した、有機化合物が腐った時に出す光を検知する「分光計」(フーリエ変換型ケミルミネッセンススペクトメーター)は、ゴム・プラスチックの初期劣化解析、放射線照射食品、包装材等の判別、無機物の年代測定にも応用が可能な画期的な装置として注目を集めている。こうした試験機以外での新しい事業分野での拡大にも注力していきたい。
真の試験機を追求
上島製作所は、1916年創業以来、ゴム、プラスチック、塗料などの産業分野に対し、JIS、ISO、ASTMをはじめとし国内外の工業規格に準拠した試験機を永年にわたり提供してきた。
同社では、顧客からの各工業製品の一層の高付加価値化、製品開発期間の短縮化及びコスト削減の要請を受け、研究開発・品質管理で一般的に用いられる試験機をはじめ、摩耗、摩擦、粘弾性アナライザーの完全自動化製品を開発。なかでも、加工特性、動的特性及び動的耐久性については、新しい技術を多数採用し、特長ある製品として多くの実績をあげている。
「製品試験をラボでシミュレートできる試験機」をキャッチフレーズとして、顧客との特殊試験機の共同開発を積極的に進めている。
◆設立:1916年(大正5年)
◆資本金:9100万円
◆役員:代表取締役社長/佐藤親弘 取締役/菊池正孝 ・林八重子・堀木 朗 監査役/佐藤弘二
盛大に記念式典を開催 開発型企業で更なる躍進を
上島製作所は1916年の創業以来、本年創業100周年を迎えたのを記念して2016年3月11日、午後5時から東京立川市のパレスホテル立川で「創業100周年感謝の集い」を開催した。
記念式典には同社従業員を含めタイヤ、原料メーカー、商社の取引先企業、金融関係の代表者ら220名が出席。松本洋平衆議院議員はじめ、井澤勇治東京都中小企業振興公社理事長、五十野善信長岡技術科学大学大学院教授、桂教夫東京都商工会連合会名誉会長、落合寛司西武信用金庫理事長らが来賓としてあいさつ。
試験機器メーカーとして長年にわたり業界を牽引してきた上島製作所を称え、お祝いの言葉を贈った。
冒頭、あいさつに立った佐藤社長は、「創業以来百有余年の間、微力ながらも産業界に貢献できましたのも、ひとえにここにお集まりの皆様方の昔からの変わらぬご愛顧と、暖かいご指導、ご鞭撻の賜ものと社員一同改めて心から感謝申し上げます」と述べ、『製品試験をラボでシミュレートできる試験機』をキャッチフレーズとして、今後さらにお客様が要求している試験機とはどのようなものであるかを追求し続け、各種分野のニーズに応える信頼性の高い試験機を提供し、お客様と共に歩んでまいります」と感謝の言葉を述べた。乾杯の音頭であいさつに立った五十野善信長岡技術科学大学大学院教授は「上島製作所さんだからこそ私どもが望むような試験機を一緒に造ることが出来ました。今後の新しい各種試験機の開発に期待を寄せています」と述べ、試験機での技術革新に貢献し続けてきた上島製作所の功績を大きく称えた。
~100周年の歩み 沿革~
◆1916年(大正5年) 創業
◆1920年(大正9年) ショッパー式引張試験機初の国産化
◆1929年(昭和4年) 株式会社上島製作所として法人化
◆1946年(昭和21年) 戦後いち早く試験機生産を開始
◆1956年(昭和31年) 試験機産業への貢献に対し黄綬褒章を受ける
◆1961年(昭和36年) 米国ASTM会員に推薦される
◆1967年(昭和42年) ブルックスインスツルメント社(米国)と流量計製造に関し技術契約締結
◆1971年(昭和46年) 通産省(現経産省)より輸出貢献企業として5年連続認定
◇1977年(昭和52年) 東京都立川市において㈱日本アプライドテクノロジ創業
大気汚染ガス測定装置等の開発・製作・販売開始
◇1978年(昭和53年) 国立市に移転
◇1979年(昭和54年) 計量法第13条に基づく計量器製造事業登録(濃度計)の国家許可を得る(登録番号第50番)
◇1980年(昭和55年) 各種ガス分析器(CO, CO2, THC, NOx)の製作および海外への販売開始
◇1981年(昭和56年) 計量方に基づく各種「濃度計」の型式認定を得て、ディーゼルエンジン排出ガス測定装置「DEGAS」シリーズを製作開始
◇1983年(昭和58年) 排気中放射性物質サンプラ、炉水中の金属分析装置など原子力発電関連の機器を製作開始
◇1984年(昭和59年) 新工場建設用地を取得。半導体用「ウエハ洗浄・エッチング装置」を製作開始
◆1984年(昭和59年) エマーソン/ブルックス 系になる
◇1985年(昭和60年) 資本金9,100万円に増資。新工場完成
◆1988年(昭和63年) 全自動引張試験機を開発
◇1991年(平成3年) ㈱上島製作所を100%㈱日本アプライドテクノロジの子会社化。エマーソン/ブルックス系列から離れ「高分子材料の物理試験機」事業開始
◆1997年(平成9年) 世界初の全自動粘弾性アナライザを発売
◇2001年(平成13年) ㈱上島製作所・㈱日本アプライドテクノロジ共ISO9001をJASにて取得
◆2003年(平成15年) 加硫試験機・ムーニー粘度計など、ゴムライン用試験機へ本格参入
◇2005年(平成17年) 事業拡大に伴い本社2号館を取得
◆2007年(平成19年) フレクソメータ/ランボーン磨耗試験機/FDRのISO化
◇2009年(平成21年) 三立通商株式会社を100%子会社化
◇2011年(平成23年) JATグループ(㈱日本アプライドテクノロジ、㈱上島製作所、三立通商㈱)ISO14001を取得。三立通商㈱はJATグループとしてISO9001を取得
2015年(平成27年) ㈱日本アプライドテクノロジが㈱上島製作所と三立通商㈱を吸収し、社名を「株式会社上島製作所」に変更
2016年(平成28年) 創業100周年を迎える
◆上島製作所 ◇日本アプライドテクノロジ