宇部興産の合成ゴム事業では、コバルト触媒で重合するハイシスBRの製造・販売を行っている。
タイヤ用途では「UBEPOL BR150」シリーズを標準グレードとし、同シリーズの「150L」や「UBEPOL VCR」等を差別化商品と位置付けている。150Lはリニアタイプで省燃費性などの物性に優れ、VCRは省燃費性に加え軽量化・薄肉化などを特長としている。
同社のBRの主な需要先は、自動車用タイヤである。16年3月期の需要動向は、乗用車用は好調だったが、トラック・バス用は回復しつつあるものの、好調とは言えない状況だった。
設備の稼働状況は、千葉工場(12万6000t)はほぼフル稼働で計画通りの出荷となり、特にVCRなど差別化商品の販売が順調だった。
海外では、タイ工場(7万2000t)もフル生産・計画通りの販売となったが、中国工場(7万2000t)は国内市場の需給バランスが大きく崩れているため、生産・販売とも苦戦している。
中国市場について、松尾典秀化学カンパニー合成ゴムビジネスユニット長は「約100万tの需要に対し、生産能力が約185万tある。需要は従来のような高い伸びが見込めないことから、需給環境が大きく改善することは当面ないだろう」と見ている。
一方、15年の第2四半期から商業運転に入ったマレーシア工場(5万t)は、大手タイヤメーカーを中心に販売していく方針で、現在、各社の承認作業の最終段階に入っているところだ。
今年2四半期までに承認が得られて本格稼働に移行し、年末にはフル稼働となる見込み。来年中には、2万2000tの増設に関する意思決定を行う予定である。
16年3月期の合成ゴム事業の売上高は、厳しい予想となっている。これは、原油・ナフサ・ブタジエンの市況が下がっているためだ。
16年の需要に関しては「JATMAの1%増の予測に近い」というのが松尾ビジネスユニット長の見方だ。JATMAは国内生産が対象だが、松尾ビジネスユニット長は「国内だけでなく、アジアや中国でも同じ程度の水準になる」と予想している。
当面の課題は、マレーシアをフル稼働に移行させて増設という道筋を確実に実行していくこと。加えて、新製品の開発と差別化製品の拡販も引き続き大きな課題である。
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