信越化学工業の2016年3月期連結決算は、売上高が1兆2798億700万円で前年同期比1・9%増、営業利益は2085億2500万円で同12・5%増、経常利益は2200億500万円で同11・1%増、親会社株主に帰属する当期純利益は1488億4000万円で同15・7%増となった。
塩ビ・化成品事業のうち、塩化ビニルは北米需要が業界全体で対前年比2%低減したにもかかわらず、米シンテック社が国内販売を伸長させるとともに、世界中の顧客への積極的な販売に努めたことから、出荷は堅調に推移した。
オランダのシンエツPVC社は、前年度後半に原料調達先で生じた設備トラブルの影響を受けた。また国内事業は、輸出が伸長したものの、住宅関連向けは振るわなかった。
この結果、同セグメントの売上高は4417億100万円で同2・4%減となり、営業利益は446億9000万円で同11・1%減となった。
シリコーン事業は、国内では電気、電子向けの一部で需要の鈍化が見られたものの、化粧品や自動車向けなど幅広い分野で出荷が堅調。海外でも、欧米のほか東南アジア向けの高機能製品が好調に推移した。
これにより、同セグメントの売上高は1877億4800万円で同5・8%増となり、営業利益は415億円で同24・2%増となった。
機能性化学品事業のうちセルロース誘導体は、国内では医薬用製品や建材用製品の出荷が堅調だった。ドイツのSEタイローズ社は、塗料用製品を中心に順調に推移した。また、豪州シムコア社の金属珪素は、出荷が堅調に推移した。
この結果、同セグメントの売上高は1168億4900万円で同4・0%増となり、営業利益は181億9000万円で同19・1%増となった。
半導体シリコン事業は、スマートフォンをはじめとする電子機器需要の減速に伴い、ロジックデバイスの在庫調整の影響を受けたが、メモリデバイス向けは総じて堅調に推移した。同セグメントの売上高は2433億2600万円で同5・8%増となり、営業利益は469億1100万円で同31・7%増となった。
電子・機能材料事業では、希土類磁石は産業機器向けが振るわなかったが、ハイブリッド車をはじめとする自動車向けが堅調に推移した。フォトレジスト製品は、ArFレジストや多層レジスト材料が底堅く推移し、マスクブランクスは出荷を大きく伸長させた。
また、LED用パッケージ材料は堅調に推移し、光ファイバー用プリフォームも出荷が好調だった。これにより、同セグメントの売上高は1867億6500万円で同1・8%増となり、営業利益は514億5300万円で同11・4%増となった。
その他関連事業では、信越ポリマー社の自動車用入力デバイスや、半導体ウエハー関連容器が好調に推移した。また、信越エンジニアリング社のエンジニアリング事業も底堅く推移した。同セグメントの売上高は1034億1500万円で同3・9%増となり、営業利益は56億3100万円で同16・7%増となった。
同社グループの主力製品の中には、原料価格をはじめ、市況や需給の変動の影響を大きく受けるものがある。また、同社グループの売上の7割強を海外売上が占め、為替の変動が同社の事業に影響を与えるとともに、海外子会社の業績を日本円に換算する際にも影響を及ぼす。
このような変動する可能性がある外的要因を考慮すると、現時点で今後1年間の業績予想を合理的に算定することは困難であるため、2017年3月期の連結業績予想は未定となっている。今後、連結業績予想の開示が可能となった時点で公表する方針だ。