横浜ゴムは5月30日、同社の技術者がゴム技術の研究に関して、一般社団法人日本ゴム協会の「第63回優秀論文賞」を受賞したと発表した。
「優秀論文賞」は今年で63回目となる歴史ある賞で、過去3年間に日本ゴム協会誌に発表された論文の中から、特に優秀なもの2件を表彰する。
今年は横浜ゴムの清水克典氏、鹿久保隆志氏、網野直也氏と共同研究者の小澤健一氏(東京工業大学)による論文を含む2件が選ばれた。
清水氏らが受賞した論文は「X線高分解能光電子分光を用いた黄銅/ゴム接着界面観察」。
自動車用タイヤに用いられるスチールコードには黄銅めっきが施されており、加硫工程において、黄銅とゴムに配合された硫黄が化学反応を起こし接着層を形成することで接着力が生まれる。従来の研究では、黄銅めっき由来の銅とゴム中に含まれる硫黄の化学反応により、ゴム/黄銅界面に硫化銅層が形成されることが知られていた。しかし、これらは一般的なXPSおよびオージェ原子分光法での測定結果であり、詳細な化学組成を調べるには不十分であった。同研究論文では、シンクロトロン放射光源を用いた高分解能光電子分光法(PES)を用いてゴム/黄銅接着界面分析を試み、接着層の形成過程および分布について明らかにした。ゴムとスチールの接着に限らず、金属と高分子の接着にもこの手法が適用できる可能性が高く、工業的にも重要な論文であると判断され、受賞となった。
受賞式は5月19日、さいたま市の大宮ソニックシティで開催された。