創刊70周年特別企画 各社の事業戦略 十川ゴム

2016年10月24日

ゴムタイムス社

顧客ニーズを捉えた環境製品を開発
原材料安で営業益4割増 建機向けホース回復へ

十川社長

十川社長

 十川ゴムの15年度実績は、減収ながらも経常利益は4割増となった。不振だった中国事業も回復し、今期は順調に利益を創出できるとする十川利男社長に、前期の実績を振り返りつつ、足元の需給動向や経営課題などについて語ってもらった。

■女性の活躍できる職場へ

 ―15年度業績の総括を
 北米自動車市場の好調を背景に、自動車産業用の燃料ホースやゴムシートなどが伸びた。一方、来年のガス自由化を前に買い控えの動きが広がったことや、暖冬の影響でガス産業用のホースや工事部材などは低調だった。また、インフラ需要の低迷により、土木・建築関連も伸び悩んだ。
 その結果、売上高は144億6400万円で前期比1・6%減となった。利益面では、材料価格の安定に加え、省人化・省力化・省エネなど原価低減努力を続けたことから、経常利益は2億2600万円、同40・9%増となり、減収ながらも増益だった。
 ―足元の状況について
 第1四半期は前期の状況が続いた。自動車関連は好調が続いており、ガス関連は今後も下がる見込みだ。昨年、好調に推移した医薬用の型物は、減少したが、特殊ゴムシートなどは前年度に続き好調を維持している。
 ―各工場の現況は
 自動車関連が主体の奈良工場、特殊なゴム板を扱う堺工場は好調なのに対し、ガス製品や医薬用途を製造する徳島工場は低調だ。
 海外の中国工場(1~12月期)は、円安になり始めた13年ごろから厳しい状況が続いていた。前年度も中国の資源関係の建設機械が低調で、当初は赤字を出していた。その後、日本向けの型物が比較的順調だったことから若干の赤字に留まっていたものが、為替差益でプラスに転じた。
 今期に入って建機の在庫調整が終わり、取引先の建機メーカーが生産を再開した。このため、1~4月は前年の1年間に納入した燃料ホースと同数が出ており、かなり大きく回復している。今期は順調に利益を創出できるのではないかと思う。
 ―新製品・注力製品の動向を
 震災関連で貯水タンクの制振ダンパーや放射線を遮蔽するゴムシートなどを開発した。放射線遮蔽材料を使ってチューブにするなど、用途開発を行っているところだ。
 新製品の開発は、ユーザーからの要望に対応する形で行うことが多い。ここ数年は環境対応製品に取り組んでいるが、顧客の要望を一つひとつ叶えていくうちに、結果的に環境の方に向かっていたという感じだ。
 新しいところでは、環境対応の建機向け燃料ホースがある。これは、建機関係での事故やクレームに基づく要望から生まれ、横展開したものだ。
 ―設備投資については
 前期は多めで5億9200万円を投資した。メンテナンス投資が中心で、結果的に省エネタイプであったり、より性能が向上したりということで、生産効率が上がった。
 今期もメンテナンス投資を中心に、6億円前後と前期並みの投資を計画している。
 ―今期の経営課題は
 多くの女性に活躍してほしい。この4~5年、総合職に女性が入るようになってきた。今後も女性が働きやすい職場環境の充実に努めたい。
 また、5~10年後を考えると年齢構成が非常に狭くなる。失われた20年に採用が十分行えなかったためだ。今期ということではないが、その人材確保が経営課題としては最も大きいかもしれない。
 ―通期の見通しを
 売上は148億5000万円、同2・6%増、経常利益は

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