創刊70周年特別企画 ゴム産業の変遷60年 1992~2005

2016年10月24日

ゴムタイムス社

年表と写真でふりかえる 1945―2005

 


 

1992~2005 バブル崩壊後

グローバル化が加速

 バブル崩壊により、一時的にゴム産業も後退したものの、数年で立ち直り、リーマンショックが発生するまで、ゴム製品の生産は趨勢として右肩上がりで推移した。自動車メーカーの現地生産が進んだことや為替の影響を避けるため、タイヤメーカーや自動車部品メーカーを始め、ゴム企業のグローバル化が進んだ。この期間の前半は米国、後半は中国とアジアへの進出が加速している。

 


 

ゴム業界 歴史のひとこま

生ゴム貴重品時代の2大事件

 終戦直後に隠匿物資となり宝物のように扱われた「生ゴム貴重品時代」の有様は、当時(1946~48年)に業界で争議の的となった「焼けゴム事件」「満州丸事件」の顛末に象徴的に見ることができそうだ。
 「焼けゴム事件」は当時、最重要な指定生産資材の一つとして統制化にあった生ゴムは、すべてゴム統制組合のルートに乗せ配分されなければならなかったが、山口県の元岩国陸軍燃料敞に在庫された「焼けゴム」が正規のルートを通らず一部業界のボスを中心に配分されてしまった事件。
 「満州丸事件」は47年5月に発生した。戦時中、上海から日本本土に向かう5000t級の満州丸が大分県愛媛沖で沈没、中には80tにおよぶ生ゴムが眠っていた。大分県庁は引き上げられたこのゴムを押収。うち28・8tは供出し、旧ゴム協連を通じて正規ルートに乗ったものの、残り51tの供出は拒み、ゴムメーカーと一部権利者と三つ巴でゴムの激しい争奪戦が現地で繰り広げられた。
 結局、それはGHQ内のCPC(連合国人資産管理課)の知るところとなり、日本人同士の略奪物件と見なしたかたちで商工省に保管を命じ、引き上げの際に骨を折った関係者の努力も水泡に帰した。 ともに供給難にあえぐ混沌としたゴム業界の様相を象徴するものとして語り継がれる事件となろう。

 


 

ゴム工業誕生の瞬間

 国内最初のゴム企業とされる土谷護謨製造所は、1986(明治19)年12月2日に東京市浅草区神吉町に草創された。現在の台東区東上野五丁目にあたり「我国ゴム工業誕生の地」の顕彰碑が東上野小学校の校門脇に建てられている。
 碑文には「明治十九年十二月二日、蝦夷松前藩士であった土谷秀立、田崎忠篤、田崎忠恕、田崎長国の四兄弟が日本で初めてゴムの熱加硫法に初めて成功した土谷護謨製造所を設立した。この製造所は後年発展を重ね三田土ゴム製造株式会社に改組されたが、幾多の技術的開拓は今日隆盛を極める我国ゴム工業の大きな礎石となっている」と刻まれている。当時のゴム製品の開発は試行錯誤の連続だったという。
 三田土護謨創設の田崎兄弟は海産物を扱い、そのかたわらで沈没船の積荷の引き上げを行っていたが、海に潜るのには潜水着やホースが不可欠。記録によるとアメリカから輸入したパラゴム(天然ゴム)を揮発油で溶かし糊状にして破損を修理した。創業の3年前、1883年のことらしい。研究・改良を重ねてゴムの熱加硫に成功し工場を開いた。製造法も「焼き芋のごときものに砂を入れ、下より薪を炊き、熱砂の媒助により硫化した」と創設者の一人である田崎忠恕氏が後に語っている。国内のゴム製品誕生の瞬間である。

ゴム工業誕生の瞬間

ゴム工業誕生の瞬間


 

1992年(平成4) 
・ゴム工業会がオゾン層破壊物質で実態調査
・上場ゴム企業各社の業績が軒並み悪化 
・景気後退で新ゴム消費量が2年連続ダウンへ
・タイヤメーカーが用済みタイヤ対策に本腰 
・特殊ゴムの増設が相次ぐ
・ゴム輸入協会がタイにミッションを派遣 
・履物業界の公正競争規約が改正
・日本ゴム産業労働組合連合が発足 
・合成ゴム、タイヤ業界が物流効率化を推進
・工業用ゴム製品の需要の低需続く 
・タイヤメーカー、スタッドレスタイヤを増産

1993年(平成5) 
・ゴム業界も雇用調整助成金の指定相次ぐ 
・タイヤ需要量は5年ぶり100万t割れへ
・ゴム企業各社の社長交代相次ぐ 
・加硫ゴムの物理試験方法のJIS改訂
・急激な円高でゴム業界は400億円の差損 
・INRAの一年間延長決まる
・ゴム連合で「労使懇」を初開催 
・自動車産業の拡大続く中国市場
・用済タイヤ処理でセメント工場がJATMAのリース制度を導入
・Jリーグ開幕でサッカー関連商品活発展開 
・全履協が靴サイズ規格を改訂へ
・日本ゴム輸入協会が創立40周年迎える

1994年(平成6) 
・ゴム産業の中国、東南アジア進出相次ぐ 
・合成ゴム出荷のゴム工業向けに明るさ
・ゴム企業各社の業績が回復基調に 
・中国からの履物輸入製品が増大
・撥水・防汚機能など高機能履物製品が相次ぐ 
・合成ゴム4年ぶりに値上げ
・天然ゴム相場が乱高下、上昇へ 
・厚生省が用済タイヤを一般指定廃棄物に
・ゴム労連が創立20周年迎える 
・T・B用タイヤ、高圧ホースの需要上向く
・猛暑で送排水ホース、農業関連製品が急増 
・タイヤメーカー各社の工場統廃合

1995年(平成7) 
・阪神大震災でゴム産業界にも打撃 
・31年ぶりに東京でIRSG総会開く
・IRC95開催 
・7月1日からPL法施行 
・ゴム製品生産が5年ぶりにプラスに  
・自動車タイヤ生産が3年ぶりに100万t突破へ
・タイヤ各社の販社が統合加速 
・自動車用部品各社のタイ進出相次ぐ 
・履物製品の開発競争激化  
・合成ゴムなど原材料値上げ相次ぐ

阪神大震災被害、ゴム労連が調査 (上)神戸・長田地区の惨状を調査するゴム労連対策本部の一行(提供・ゴム労連)(下)“わが国ゴム工業勃興の地”の記念碑も無残な姿に

阪神大震災被害、ゴム労連が調査 (上)神戸・長田地区の惨状を調査するゴム労連対策本部の一行(提供・ゴム労連)(下)“わが国ゴム工業勃興の地”の記念碑も無残な姿に

1996年(平成8) 
・タイヤメーカーがオープン価格を導入 
・円安でタイヤ輸出好調 
・カー黒、合成ゴム値上げ       
・ゴム企業各社の業績回復 
・ゴム労連が第2次中期ビジョン策定
・ゴム企業の中国進出相次ぐ 
・土木・建材分野で

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