ゴム・エラストマー技術展が10月25~28日の4日間、福岡県北九州市の西日本総合展示場新館で開催された。
同展は世界中のゴム・エラストマー分野の関係者が一堂に会する「2016年国際ゴム技術会議(IRC2016北九州)」と併催された技術展示会。日本で開かれるのは11年ぶり5度目。「未来へつなげるイノベーション」をテーマに、海外を含む111の企業・団体が出展した。ゴム関連企業・団体を2回に分けて紹介する。
●原材料
◆旭化成
旭化成はシリカ分散性を向上させて、省燃費性とグリップ性能を飛躍的に改良させたエコタイヤ向けS―SBRなどの合成ゴムや、各種樹脂の改質剤・相容化剤、粘接着剤などの幅広い用途に対応できる、エラストマーの製品と技術を紹介。
エラストマー系では、耐候性・耐熱性に優れた水添スチレン系熱可塑性エラストマー「タフテック」を紹介した。
◆宇部興産
宇部興産は「UBEPOL VCR」と「UBEPOL MBR」のポリブタジエン製品を紹介した。
「UBEPOL VCR」は、ブタジエンゴム中に樹脂をミクロンオーダーで微細繊維状に分散させた複合体で、ゴム製品の軽量化・低燃費化・生産性向上に貢献する材料。「UBEPOL MBR」は、メタロセン触媒により特殊な構造を実現した新規BR。主にポリスチレン改質材用途で優れた特長を示している。
◆キャボットジャパン
同ブースでは、会社概要をはじめ、製品紹介、海外のネットワークなどを紹介。製品紹介では、作業性が良好で高耐磨耗性と低発熱性が特徴の「ショウブラックN330」、非常に高い補強性を有しTBタイヤのトレッドに使用される「VULCAN10H」、ラジエーターホースなどの水系ホースや防振ゴムに使用される「ショウブラックIP200」などサンプル展示し、性能の高さを訴求した。
◆テクノプレニードヒダ
ゴム薬品マスターバッチ「プレニード」を中心に非フタル酸可塑剤油展などを紹介した。
非フタル酸可塑剤油展については、非フタル酸可塑剤を指定のNBRポリマーに希望する油展量でオリジナルポリマーをカスタマイズできることを示し、生産効率の向上などを訪問者に提案した。
そのほか、製品開発を常に行っている同社では、ゴム薬品マスターバッチの新製品TBZTD、ZTCなども紹介した。
◆天満サブ化工
ゴムより長い歴史を持つという加工助剤「ファクチス」を紹介。植物油脂に硫黄を添加して製造するファクチス(サブ)は、かつて天然ゴムが貴重品だった頃には安価な代用品として重宝され、合成ゴム出現後は増量剤、軟化剤を経て加工助剤と役割が変遷している。特徴には非熱可塑性、加圧流動性、吸油性が挙げられるという。
◆東海カーボン
ゴム用ファーネスブラック製品「シーススト」、黒色顔料用・導電用として開発された「トーカブラック」、親水性カーボンブラック「アクアブラック」をメインに出品した。アクアブラックは、通常、疎水性であるカーボンブラックを独自の表面処理技術により親水性に改質し、水への分散性を大幅に向上させた製品。新たなインク用分散体、着色剤等として注目を浴びている。
◆モメンティブ
同ブースでは、高透明液状シリコーンゴム、紫外線硬化型シリコーンゴム、UV硬化シリコーンゴムなどを紹介。これらのシリコーンゴムの応用例を紹介することで、様々な製品展開でできることをアピールした。
●ゴム・エラストマー製品
◆JSR
ゴム・エラストマーの最新技術を、詳細に説明したパネルと実用例を用いて紹介した。「JSR SSBR」は、加工性、物性、動的特性に優れており、タイヤ原料などの用途がある。「JSR FUELOCK」は優秀なガスバリア性及び成形加工性を有すことから燃料ホースに使用されている。
◆住友ゴム工業
新材料開発技術、天然資源の活用、応用技術の3つのカテコゴリーに分けて展示。新材料開発技術では、国際技術会議招待講演で発表した「大規模分子動力学シュミレーションを用いたゴムの破壊メカニズムの解析」の内容をわかりやすく解説。天然資源の活用では、同会議で発表した「天然ゴムの構造解析」「天然ゴムの試験管合成」の発表内容も解説したほか、パラゴムノキ由来の天然ゴムに代わる新たな天然ゴム資源「ロシアタンポポ」を示した。応用技術については、医療用ゴムや制振バンパーなどの先進技術を披露した。
◆東洋ゴム工業
東洋ゴム工業はタイヤに用いられている独自の材料設計基盤技術「ナノバランステクノロジー」の進化を解説する説明パネルやタイヤ製品の展示を行った。「ナノバランステクノロジー」は、ゴム材料を分子レベルで解析するというアプローチで、ナノレベルでの分析と解析、それにあわせた素材設計と加工により、高機能なゴム素材を生み出す独自技術。
◆日本ゼオン
基盤事業であるエラストマー素材事業(合成ゴム。合成ラッテクス、化成品)の各種製品群を紹介したほか、最新の高い技術も解説した。
同ブースで紹介した、独自製品である水素化ニトリルゴム「ゼットポース」は同社の特殊ゴムの代表的な製品。耐熱性、耐油性、耐候性に優れいるため、自動車のホース、パッキング、タイミングベルトなどを中心に国内外で多くの実績を残している。またゴム系粘着接着剤や塗料バインダーなどに広く使用されるC5系石油樹脂「クイントン」シリーズも展示した。
◆ブリヂストン
タイヤ製品からは「オロジック」や「エアフリーコンセプト」を、工業用品からは「らく楽アダプターシリーズ」や「サイホン排水システム」などの最新技術を紹介した。「オロジック」はタイヤの大径化により接地部分の変形を抑制し、車両の燃費向上に関わる転がり抵抗を低減するとともに、狭幅化により走行時の空気抵抗も低減するタイヤ。
工業用品からは、2015年にグッドデザイン賞を受賞した樹脂製アダプター継手「らく楽アダプターシリーズ」、建物の水回り設備を自由に配置・設計することが可能になる「サイホン排水システム」を展示紹介した。
◆横浜ゴム
横浜ゴムは「環境技術」をテーマに、タイヤ・ホース配管・工業資材の各種製品を幅広く展示した。ホース配管では、燃料電池自動車向けの水素ガス充填用ホース「ibar HG」シリーズ、環境負荷が低い次世代冷媒「HFO―1234yf」に対応したカーエアコン用ホース「AC6B・11」を紹介。工業資材では、世界トップレベルの耐摩耗性を実現したコンベヤベルト「タフテックス」や、原油・石油製品の海上移送で高い信頼性を得ているマリンホースの模型を展示した。