活躍するリケジョ002 TOYO TIRE 吉川宏美さん

2019年08月02日

ゴムタイムス社

活躍するリケジョ002 TOYO TIRE 
中央研究所 第一研究部 分析グループ長 吉川宏美さん

 

積極的に研究発表を行い、高い技術レベルを維持したい

◦基盤技術センターと担当されている仕事について教えてください?
 基盤技術センターでは、TOYO TIRE全体の分析業務を一手に引き受けています。 現在はタイヤをメインに、製品の分析や製品に用いられる原材料などの品質検査をはじめ、開発部門からの分析依頼や、工場からのさまざまな依頼など幅広く対応しています。また、試験方法そのものを精査し、注意点があるかなどをある程度把握した上で、工場など各拠点に展開しています。
 私が所属する第1研究部には、ゴム材料グループと分析グループがあります。私は分析グループのグループ長として、主にマネージメント業務を担当しています。

◦マネージメント業務で心掛けていることはありますか?
 今までは、自分で手を動かして設定した目標を達成していましたが、マネージメント業務では人に動いてもらい、目標を達成しないといけないので、当初はその違いに苦労しました。
 ただ、私自身も指示を受ける時はなぜこの仕事をするのかと常に考え、納得した上で仕事をしたいと思っていたので、仕事を部下に依頼する時は、背景や仕事の意義を丁寧に説明することを心掛けています。
 現在、グループには比較的若手が多く、私が直接指示、指導をしています。近年は、人材が揃ってきたので、今後はサブリーダークラスの人材育成が課題となります。

◦若手への対応の仕方は?
 ジェネレーションギャップがあるので、できる限り若手の考え方を理解し、自分と違う考えでも受け入れるようにしています。
 それと、すぐに答えを教えずにヒントを与え、気付きを促しています。もどかしいですが、考えることによって、成長に繋がると期待しています。

◦分析グループで取り組みたいことは?
 日本ゴム協会や高分子の分析に特化した学会などに、これまで以上に積極的に研究発表を行い、技術力の高さをアピールしていきたいです。
 また、開発部門に出向き、新しい技術の説明を行なったり、ニーズにあった開発を目指していきたいです。自分では良かれと思った技術開発が、実はニーズが無かったなどの齟齬が過去にあり、ニーズを確認し合うのは重要だと認識しています。
 また、信頼性が保証されたデータの提供や高い技術レベルを維持し、社内からの分析依頼でも、外部の顧客だと考えて、親身になって対応することに取り組んでいます。

 

ウレタン分析を確立させたことが自信に

◦学生の時に理系の道に進んだ理由は?
 将来、何か手に職を持ちたいこと、高専の在学5年間で大学4年卒業レベルの専門知識が学べるというのを聞き、高専への進学を決めました。また、早く自立をしたかったのも理由の一つで、漠然と化学者になりたいという想いはありました。
 入学当時は、女性がクラスに7人しかいない状況で、女性の先輩も7,8人しかいない、女性が凄く少ない時代でした。
 高専5年生時には、化学工学の研究室に入り、連続多段抽出装置などの機械を用いて、抽出効率の測定などをテーマに研究を行いました。当時、基本ソフトウェアのWindowsが無い時代に、DOS/V機のパソコンを用いて、BASICプログラムを組み、測定や実験をしたことが今でも役に立っています。

◦就職と入社後について教えてください?
 研究所に入り、研究をしたいと考えていた所、当時、当社の研究所が、JR茨木駅徒歩3分の好立地な場所にありましたので、それが入社の決め手となりました。一般的に研究所は大きな敷地が必要なため、田舎にありますが、当社は非常に良い場所にありました。
 入社後は、基礎研究・材料開発を希望していましたが、分析部門に配属になりました。当時は、技術系の女性が少なく、女性で技術系といったら、分析という時代でした。初めは抵抗があったのですが、分析機器を触るのが楽しく、すぐに分析の仕事が好きになりました。細かい作業が得意だった事も、自分に向いていると感じました。
 グループ長になるまでは、電子顕微鏡と質量分析の担当で、分析手法の開発をしていました。
 印象に残っていることはウレタンの分析をゼロから開始し、分析体制を確立させたことです。
 それまで、ウレタン製品は扱っていましたが、製品分析は未着手でした。原材料メーカーに勤める知人からアドバイスを頂いたり、メーカーに足を運び情報収集し、現在のルーチン分析の根幹となる土台を、着手してから9年程かかりましたが、確立させることができました。
 苦労した分、自分への自信につながりましたし、得難い経験もさせてもらい、幸運だったと思います。

◦職場環境について教えてください?
 20年程前になりますが、中央研究所で育児休業を取得したのは、私が初めてでした。当時は制度化されて間もなく、大変な思いもしましたが、後輩には育児休業が取りやすい環境を作れたと思っています。私より後の人は、全員が育児休業を取った後、職場復帰しています。
 職場環境としては、短時間勤務が可能であったり、年休も取りやすいです。自分の担当が定まっているので、一ヵ月でやる仕事を上手くやり繰りして、時間を調整することもできます。
 また、グループ自体も皆で協力し合える雰囲気なので、男性・女性両方とも凄く働きやすい職場だと思います。

◦休日の過ごし方は?
 バイクとソフトボールが趣味です。ソフトボールは以前、男子チームと女子チームの両方に所属していて、土日共に活動していましたが、ソフトボールだけに休日を使うのは勿体ないと思い、今は男子チームだけに絞って活動しています。ポジションはピッチャーなのですが、私は女性なので男性に打たれてもどうってことない、当たり前という気楽さもあって男子チームを選んでいます。野球をやっていた息子と一緒にプレーできるのも、楽しいですね。球種はストレートとチェンジアップとスライダーが投げられます。
 バイクはハーレー含め3台所有しています。愛着がある昔のバイクが捨てられず、所有台数が増えてきてしまいました。息子も免許を取りましたので、主人と息子と三人でツーリングに行ったのは、良い思い出になっています。

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。

関連キーワード: ·