注目のポリマー関連製品をピックアップVol.3 日本ウォーターズ 「ACQUITY APCシステム」「APGC」

2019年11月06日

ゴムタイムス社

次世代GPCのACQUITY APCシステム

注目のポリマー関連製品をピックアップ
Vol.3 日本ウォーターズ「ACQUITY APCシステム」「APGC」

 

 日本ウォーターズ(東京都品川区)は、分離・分析科学をはじめラボの情報管理、質量分析のパイオニアとして、60年以上の歴史を持つ米国に拠点を構えるウォーターズの日本法人。同社は分析機器や分析装置などの輸入や販売、サービスを行い、ユーザーの要望にトータルサポートしている。同社が注力する2製品について、アジアパシフィックケミカルマテリアルマーケットディベロップメントの佐藤信武マネージャー(以下、佐藤)とマーケティング本部化学製品事業部の佐々木俊哉マネージャー(以下、佐々木)に尋ねた。

ACQUITY APCシステム(以下、APC)

──APCの特長を教えてください。

佐藤:2013年に販売を開始したAPCは「Advanced polyer Chrmatograpy(アドバンスド・ポリマー・クロマトグラフィー)」の頭文字で、次世代GPCとなるポリマーの分子量分布を測定する装置です。APCは従来の汎用的な装置であるGPC(Gel Permeation Chromatograph)を進化させ、高性能かつ短時間で、より詳細にポリマーの分子量情報を取得できる装置となっています。APCはゴムや樹脂などの高分子材料すべてが対象となっており、精度の高い研究をする用途が使用されることが多く、お客様の約9割はR&Dで使われています。

佐々木:まず、APCのもとになるGPCについて触れますが、米国のウォーターズが世界で初めて1963年にGPCの技術を開発し、GPC100を販売しました。ウォーターズは1958年に5人で始めた会社であり、昨年2018年で60周年を迎えました。ウォーターズはGPCをさらに発展させAPCの技術を開発しました。

 通常のGPCよりも高速で分離能が高く、この両方を兼ね備えているのはAPCだけです。速さが売りのGPCは他社でもありますが、速いがゆえに分離能は犠牲にしているように感じます。

──APCを使用する分野について。

佐藤:とくに半導体分野などの先端

材料を扱う企業様が多く、販売実績も伸びております。半導体などに使われる機能性材料を作る際には、より厳密な精度で研究や開発をする必要性が求められているため、APCの需要が増えているのです。
最近のAPCを導入するケースでは、R&Dで開発した製品と同じ装置でQCも測定するというケースがありました。ゴム・樹脂分野では日本の大手のタイヤメーカー・ゴムメーカー様で導入実績があり、対象としては有機高分子材料の中でも、より先端材料を取り扱う多くの企業様のところで使っていただいています。

左から佐々木マネージャー、佐藤マネージャー

左から佐々木マネージャー、佐藤マネージャー

──販売実績について。

佐藤:APCを販売する台数比率では、確かにグローバルで販売していますが、アジア圏内が圧倒的に多いです。とくに、その中でも日本が一番多いです。アジアでは電子・電気材料メーカー様が多く、サプライヤー様が多いためです。国内の産業ではディスプレイや半導体を例にとると、海外と比べてエンドプロダクトで有名な企業は数多くありませんが、その部材を供給するメーカー様が国内に多くあります。これらの企業様は先端材料を製造するため、APCの需要が増えているのです。

佐々木:ウォーターズの他の様々な装置の中で比較した場合に、ワールドワイドでAPCに関しては日本の売上比率が非常に高いです。国別で見るとこの製品に関しては日本が一番実績を伸ばしている状況です。

──今後の展開について。

佐藤:APCのベースの技術は大幅には変わらないのではないでしょうか。通常では、RI検出器を付けますが、お客様がニーズにより質量分析計を付けるケースもあります。アプリケーションの幅は増え、お客様の方でニーズに応じてカスタマイズできるようになっています。

 また弊社にラボがありますが、装置を検討されているお客様のサンプル評価などを行うラボとなっています。お客様が実際に自分のサンプルを測ってみたい、従来のGPCと比較したい場合にサンプルをお持ちいただくことで使用できます。今後として、国内の研究開発のニーズは依然と高まっており、それを機会にAPCの販売促進につなげていけたらと考えております。

ラボでサンプルテストができる

ラボでサンプルテストができる

APGC

──APGCについて教えてください。

佐藤:APGCとは「Atmospheric Pressure Gas Chromatography」の略で、大気圧ガスクロマトグラフィーを表します。

 APGCは新しいイオン化法のガスクロマトグラフィー技術で、四重極タイプとTofタイプの2種類の質量分析計に接続することができます。四重極タイプは定量分析、Tofタイプは精密質量を測定し、構造解析などの定性分析に使用するシステムです。今回は、APGCのうち、Py―GC/APGC―Xevo™ G2―XSQTofを紹介します。

APGC(Xevo G2-XS QTof)

APGC(Xevo G2-XS QTof)

──このAPGCの特長は。

佐藤:このシステムのメリットを挙げると、APGCイオン化法(高感度ソフトイオン化)、分子関連イオンとプロダクトイオンの情報を同時取得可能、トリマー、テトラマーの高感度測定可能などがあります。

 とくに、一番の特長は、高感度とソフトイオン化を両立したAPGCイオン化法です。APGCイオン化法のメリットは、見たい物そのものがイオン化しているため、まず見たい物の組成が把握できます。ハードイオン化法のEIの場合は、見たい物が壊れてしまい、プレカーサイオンが見られないケースがあり、構造解析において非常に手間と時間がかかります。またEIで取得したスペクトルベースのデータベース中に無い化合物があった場合には、基本的にわからないということがほとんどです。しかし、APGCイオン化法を使うと、実測ベースのデータベースは必要なく、構造情報ベースのIn Silicoデータベースを用い、幅広い範囲からの検索、構造推定が可能となります。

 この装置に関しては、デメリットは正直ありません。これも先ほどのAPCと同じように今までに無いウォーターズの技術だと言えます。

──どのような分野で使用されていますか。

佐藤:販売した当初は、定性用のMSではなく、定量用のMSを付けて食品や環境の分野で販売していました。2016年頃からEI法を使用したGC/TofMSを使用しているお客様の限界に達している現状を見越して、このAPGCをお客様に提案させていただいております。最近では有機材料の先端材料のR&Dの実績が多いです。

──今後の展開はどうなりますか。

 佐藤:現状として、有機高分子材料を作っているR&Dのお客様は、パイロライザーを付けたGCの、四重極MSとの組み合わせで、必ず1台は持っています。まずEIでそもそも限界があり、後は四重極MSという精密質量が取得できないMSで測定しているケースが多いため、APGCをお見せすると、必ず興味をいただいております。

 6月に開催した弊社のフォーラムでも、APGCは非常に多くのお客様から興味があるということで反響がありました。

佐々木:サポート体制については、弊社は250人の従業員がいますが、その半分はサポート部隊となっております。装置の据え付けをはじめ、修理などのアフターサービスも万全な体制を築いております。

──アプリケーションやオプションは。

佐藤:アプリケーションの中心となるのは、液体クロマトグラフィーと質量分析計があります。LC/MSとしても使えますし、GC/MSとしても使えます。またイオン化法のオプションをいろいろと揃えております。例えば、材料分野のお客様でよく使われるのは、ASAPという直接導入プローブで、材料分野のお客様で質量分析計を購入するお客様は100%揃えております。ほかには、表面分析用のイオン源どもありこの辺のニーズが最近多いです。

──今後の販売戦略は。

佐藤:今回、ご紹介したような製品はまだ汎用的に使用されている装置ではなく、研究開発のニーズの方が高いような製品です。幸いなことに日本は研究開発分野で多くの企業様がいらっしゃるので、まだまだそこに伸びしろがあると感じております。研究開発ニーズの需要を的確に把握し販売していきたいです。

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。