活躍するリケジョ004 JSR
四日市研究センター 機能高分子研究所 高分子材料開発室 野口詩織さん
◆現在、どのような開発をしていますか。
動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)と呼ばれる多相系高分子材料の開発をしています。
TPVは、常温では加硫ゴムのような性質を保持し、高温条件下では可塑化するためプラスチック同様に成型可能で、加硫ゴムに比べて顧客での成型工程簡略化・エネルギー消費の低減につながる材料です。用途としては自動車部品が中心で、その中でもウェザーストリップでの使用が多いです。
私が主に担当しているのは既存のウェザーストリップ材料の改良と新用途模索のための基礎技術の研究です。材料の改良では営業だけでなく、私たち技術者も顧客を直接訪問して、ニーズを掘り起こしています。基礎技術の研究では、展示会の視察や様々な人から情報を収集し、可能性を検討しています。
◆製品開発の工程を教えてください。
初めに、求められる物理特性に対して私の知見から材料を選択します。続いて、選択した材料を練ったのちシート化したものを評価し、狙い通りの物理特性がなかなか出ない場合は、その原因について分析を専門としている方や有識者に相談しながら調査します。その結果から、新たなアイデアを生み出し、実験を繰り返すという流れで取り組んでいます。
その後、量産化に向けた取り組みを開始しますが、量産化が可能かどうかも製品開発をする上で重要な要素となります。量産化を最初から考慮しながら開発を進めています。
◆現在の仕事の魅力ややりがいを教えてください。
材料選択から製品化までを自分自身で行えるところに魅力を感じています。材料選択の時点ではいろいろな可能性を秘めているため、どのようなゴールにたどり着くのかを考えながら開発を進めるのは面白いです。良い製品を開発出来れば、顧客の採用にも直接繋がりますので、その点でもやりがいを感じています。
◆仕事をする上で心がけていることは。
やはり材料開発という仕事に携わっている以上、様々な顧客と直接会話することが大切だと考えています。今後、当社の材料を顧客に採用して頂くためにも、異分野の意見も取り入れる必要があると考えており、自部署だけでなく社内外を含め、色々な方の知見を頂くよう心がけています。顧客を訪問する際にも、自部署の代表として訪問するというスタンスで、広くアイデアを求めるよう心がけています。
◆現在の職場環境について教えてください。
昨年、「センター・オブ・マテリアルズ・イノベーション」という新研究棟ができた事により、今まで別の場所にあった各研究所が一堂に集約されました。ワンフロアに毎日違う座席に座るフリーアドレスという配置で、各分野・事業の研究者が集まって気軽にコミュニケーションがとれるため、入社二年目の私にとって非常にありがたい体制だと感じています。そこで、私にない知見について他の部署に在籍している同期に話を聞いたり、知見を持っている方を紹介してもらっています。今後も、センターでの交流を活かし、お互いが刺激し合い新たなアイデアの創出や知見をより一層深めることで、より良い製品開発が行えるのではと考えています。
◆理系の道に進んだ理由を教えてください。
単純な理由ですが、化学が好きだからです。中学の化学の先生が凄く良い先生で、教え方ももちろん上手でしたし、積極的に様々な実験をして下さる先生でした。そこでの経験が化学を好きになるきっかけとなりました。そこから、高校は理系への道を選び、大学では応用化学を専攻しました。その中でも、ポリマーの考えた通りにならない、一筋縄ではいかない、良い意味でも悪い意味でも色々な可能性を秘めているところに惹かれ、大学4年生の時にポリマーに関する研究テーマ選びました。具体的には、電池材料としてのポリマーを合成し、電池を自ら組み立てるところから電池特性を評価するところまでを研究として取り組めたことがとても良い経験になりました。
◆現在の仕事を選んだ理由を教えてください。
何か1つの事を専門にするよりも、色々な事にチャレンジすることが好きなので、若いうちから色々な事に挑戦させてくれるような環境がある職場を1番の軸として就職活動をしていました。その中で、入社10年で複数の部門に異動できる制度である「キャリア・デベロップメント・プログラム」があるなど、会社として様々な経験・挑戦を積み重ねながらキャリア形成をしていくことができる会社だと思い、当社を選びました。
◆入社後は。
入社してからは実際に様々な経験をさせてもらっています。今年は初めて海外出張も経験させもらい、非常に良い経験になりました。海外出張時は英語で説明をしましたが、英語についても当社は英会話研修が社内で受講できる制度もあるので、英語を習得しやすい環境だと思います。その他にも、化学物質管理の説明会や、輸出貿易管理令などの法務関連講習など、様々な分野の研修も実施していて、その中でも大学時代に全く勉強してなかった特許についての研修が1番勉強になりました。また、少し先の話ですが、留学などを通じて海外で何か新しい可能性を探したり知見を深めたり出来ればと考えています。
◆今後、どのような開発をしていきたいですか。
まずは顧客に採用されるような材料の開発をすることが第一の目標です。
そして、0から作製した何か新しい機能性材料を開発したいです。開発するだけでなく、当社は開発した製品を直ぐに顧客に紹介することができるので、自分で売り込む事ができればと考えています。開発からマーケティングまで一通りできるようになりたいと考えています。
◆休日の過ごし方は。
休日は月に2回程度、1~2時間のドライブをしています。四日市は京都や名古屋、大阪など、足を伸ばせば意外といろいろな観光地に行けるというのもあって、気分転換のためにドライブをしています。京都には5回くらい行きましたね。今後も様々な場所へ行きたいです。
*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。