活躍するリケジョ005 三井化学
研究開発本部高分子材料研究所 エラストマーグループTPEチーム 髙山奈菜さん
モビリティ事業本部機能性コンパウンド事業部ミラストマーグループ 須永愛代さん
研究開発本部高分子材料研究所 エラストマーグループTPEチーム 楠本玲実さん
◆現在、どのような開発をしていますか。
髙山 インストルメントパネルやドアトリムなど自動車の内装材などに使用される架橋型熱可塑性エラストマーである「ミラストマー」の製品開発を担当しています。
「ミラストマー」は熱硬化型のEPDMと熱可塑性のポリオレフィンの結晶性成分が主成分となっていて、ゴム弾性を維持しながら、成形加工性にも優れているのが特長です。PVCや加硫ゴムなどと比較すると軽量で着色も出来ますから、自動車部品をはじめ、建材のガスケットや歯ブラシのグリップ素材などに幅広い分野でご採用頂いています。お客様のニーズに応えられるように配合設計をしたり、量産試作に立会って製造現場の仲間と最適な生産条件を探索することが私の主な仕事です。特に、インストルメントパネルには臭いの低減が求められているので、その実現に向けた取り組みに今は注力しています。すでに、自動車メーカーの臭気低減基準をクリアした低臭気グレードも開発でき、お客様から良いご評価を頂くこともできました。
須永 私は自動車以外の用途の営業を担当しています。お客様のニーズを捉えるのは営業の役割ですが、やはりどうしても技術に関する知識では限界があるので、研究員のお力をお借りします。どのようなデータや情報が必要なのか、どのような形式ならお客様にご理解いただけるのか研究者と一緒に考えてもらいます。複雑な案件だと顧客面談の場に研究者も同行して頂くこともあります。研究者にはいつも助けてもらっています。
◆仕事の魅力ややりがいを教えて下さい。
髙山 ニーズに対して仮説を立てて、自分で試作品をつくって、もしそこで不具合が見つかれば、その原因調べて改良するというサイクルを回しています。その結果として、お客様から良いご評価を頂けた得られた時にやりがいを感じます。最近では、中国のお客様から頂いていた臭気低減の課題に漸く解決策をみつけて試作品を供試していたのですが、どきどきしながら出張して、評価結果が合格とおっしゃって頂いた時には本当に嬉しかったです。「ミラストマー」は40年以上の長い歴史を持つ製品ですので、諸先輩のみなさまが築きあげた信頼を壊してはいけないというプレッシャーもありますが、その分、課題を解決した時の喜びはひとしおです。
◆仕事で心がけていることは。
髙山 海外のお客様や海外現地スタッフとはメールや電話だけでなく、ウェブ会議も活用しながら、ミスコミュニケーションが起こらないように心がけています。その他にも、身体を動かしたり、昼食時に職場の方と軽くディスカッションをしたり、そういった何気ない時間を大事にするようにしています。
須永 私は、お客様にスピーディーにレスポンスをすることを心がけています。メールや電話のやり取りを溜めずに、その日のうちにご連絡することで、次のアクションにつながりやすくなると考えています。また、新規のお客様を訪問する際には入念な下調べをするように心がけています。
◆理系の道に進んだ理由を教えて下さい。
髙山 高校の時に、フェノールフタレイン溶液を使用した色の変化を確認する実験で、物質の色の変化を目の当たりにしたことが、科学に興味を持つきっかけになりました。大学では、物質化学を専攻し、光の波長の変化によって様々な色を有する構造体の研究をしていました。
◆現在の仕事を選んだ理由を教えて下さい。
髙山 研究室で化学物質を作成していた事もあって、モノづくりが楽しいと感じていました。しっかりとモノを作り、それが評価されることが楽しかった事と、大学の専攻が化学でしたので、それも活かしたいと思った事が現在の仕事を選んだ理由です。また、面接の場でお会いした学生や面接官が個性豊かで、明るく楽しい方が多かったので、私に合う会社だと感じました。
須永 私は文系出身で専門も国際政治学だったため、化学は高校の授業以来でした。しかしモノをつくる事への関心や海外で仕事をすることへの憧れから、化学メーカーを志望しました。その中で、明るく個性豊かな人がとりわけ多いと感じた当社を選びました。実際入社しても私の中でイメージのギャップは少ないですし、同じ理由で入社を決めた同期も多く、この明るさと個性の豊かさは三井化学の共通のキーワードなんだな、と改めて実感しました。
◆入社後は。
髙山 入社後に1ヵ月間の研修、その後に工場実習で3交代勤務を経験しました。配属後はチームの先輩から、毎日2時間、約1ヵ月に渡り、高分子について基礎から丁寧に教えて頂きました。
須永 営業職ですが、私も入社1か月後、高山さん同様に工場で3交代勤務実習をしました。また、当社にはチューター制度があり、新入社員には経験豊かな先輩社員が教育係として1年間配置されます。私も配属後はチューターから様々な事を教えてもらいました。大変丁寧に教育をしてくださるので、感謝の気持ちでいっぱいですね。
◆今後、どのような開発をしていきたいですか。
髙山 今後は自動車部品以外の開発に携わってみたいです。2021年には関係会社の三井化学サンアロイ㈱に新工場が建ち、その中に新しい「ミラストマー」ライン設備がも導入される予定で、更に幅広い配合設計が可能になります。設備を駆使しながら、新しい機能性を持った「ミラストマー」を作れたらいいな、と今からわくわくしています。最近は少し余裕が出て新しい研究に使う時間をつくれるようになってきたので、私のもっているアイデアを試してみたいです。
幸運にも私は開発した製品が比較的早くご採用頂いたので、自信に繋がりました。採用される前は、本当に採用されるのか信じられない気持ちでいたのでて、その分、すごく嬉しかったのを覚えています。これからもたくさん採用して頂けるように頑張りたいです。
須永 現在は営業として、新規用途開発を模索しています。ファッション、楽器、スポーツ用品など、意外性のある用途をさらに見つけてみたいです。そのためにはより積極的にお客様を訪問し、ニーズの掘り起こしや提案の機会を増やしていく必要があると考えています。
◆休日の過ごし方は。
髙山 休日はよく卓球をしています。卓球は中学から始めたのですが、中学生の石川県(出身地)大会で2位になったこともあります。高校で辞めてしまったことを後悔していましたが、入社後に卓球部に誘って頂いたのをきっかけに、また卓球を始めました。袖ヶ浦の市民大会ではダブルスで優勝もしました。
須永 毎週、旅行やドライブなど、いつもどこかに出かけています。海外旅行も大好きで、大学時代に1年間留学していたベトナムにはとても愛着があり、最近もまた行ってきました。高校時代はサイクリング部に所属していましたので、体力には自信があります。千葉にある社宅から実家のある埼玉まで10時間ぐらいの、ママチャリ・サイクリングをしたこともありますね。
*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。