専門技術団体に訊く5 団体インタビュー 公益社団法人 高分子学会 平坂雅男事務局長

2021年03月11日

ゴムタイムス社

専門技術団体に訊く5 団体インタビュー
公益社団法人 高分子学会 平坂雅男事務局長

産業界を取り込み会員増目指す

 高分子学会は高分子科学をはじめ、技術の基礎的研究、その実際的応用の進歩、学術文化の発展、それらを担う人材の育成を図り、社会の発展に寄与することを目的としています。平坂雅男事務局長に沿革、活動内容、学会の課題などを尋ねました。

♦沿革と概要について

 1938年に米国デュポン社のナイロンの工業化がきっかけで、日本も合成繊維に力を入れていくことになり、1941年に財団法人日本合成繊維研究協会が設立しました。
1944年に高分子化学協会として改称され、1951年には高分子化学協会は発展的に解散し高分子学会が設立。そして、2012年に公益社団法人に移行して今に至っています。
現会長は京都大学の秋吉一成先生で、会長の任期は2年ごとの交代制になっています。

♦会員数について。

 会員数は、1952年で1518名でしたが、一時期は14000名まで増えました。現在では会員数の減少傾向もあり、会員数は約9000名になっています。6500名の正会員と、2400名の学生会員、そして、企業の維持・賛助会員がいます。正会員は企業や大学の先生の方々、学生は大学の修士課程や博士課程の人たちです。

♦活動内容を教えてください。

 支部は北海道から九州まで8支部あります。活動内容については、講座やセミナーを開催するほか、学術的な発表の場の提供と情報の共有化を行っています。
 当学会では毎年、5月に年次大会、9月に高分子討論会、11月にポリマー材料フォーラムの3大行事があります。5月の年次大会は約3000人、9月の高分子討論会も約3000人の参加者で、学術発表件数は約1500件と大きな大会では活発な活動をしています。年次大会は国際会議場を借りて開催し、高分子討論会は大学で開催しています。また、21の研究会があり、専門分野に特化してそれぞれ独自で活動をしています。
 国際会議については、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、他の学会が国際会議を中止または延期していることから、開催日程を検討している状況です。出版では、年12回発行している「Polymer Journal(月刊)」と「高分子(月刊)」を発行しております。

年12回発行している「Polymer Journal」と「高分子」

♦2020年の活動は。

 コロナ禍で、福岡で開催予定だった5月の年次大会が中止となりました。6月の総会はオンラインで開催し、そこで会長交代なども承認されました。
 9月は岩手大学で開催される予定だった高分子討論会をWEB開催に切り替えましたが、約2000名が参加しました。今回のコロナ禍でも、研究は発表しないと実績にならないので、学会として発表の場を提供する義務があると感じました。2021年5月の名古屋で開かれる年次大会も、WEB開催することを決定しました。現在、企業や大学も出張が制限されていますので、支部活動や研究会活動もほとんどすべてWEBで行われています。

♦学会の課題について。

 一番の課題は会員数の確保です。これは学会を運営する上での財源確保にも関わっています。いかに産業界を取り込むかが一番大きな課題になります。またAIやマテリアルインフォメティクスとのマッチングなど、学術面で高分子化学とITの融合をいかに進めるかが課題であると捉えています。また国際化については、2006年頃より韓国の高分子学会と提携しており、お互い定期的に研究者が行き来をして交流を深めています。台湾、インド、フランスの学会とも提携しており、今後もグローバルな友好関係の構築が課題となります。
 今後の活動はWEBとリアルのハイブリット開催の検討が必要になると思います。ただ、人的ネットワークの形成はWEBだけではなかなか難しいため、ここをどのように対応していくかが課題になってきます。

♦学会を運営する上で力をいれていることは。

 2011年からWEBを使った「高分子学会ウェビナー」という講義配信を年間10回行っています。独自のシステムと運営で、月1回ペースで開催しております。また次世代イノベーター育成講座は、今年で4年目を迎え、学会を支える企業の人材育成のために行っている行事です。将来企業を担っていく若手を対象にマネジメント手法や技術情報の取得方法などのビジネススキルを教えています。
 その他、中高生向けに高分子のマンガを出版したり、高分子未来塾というウェブサイトでは、学会のホームページと違い少々くだけた表現でやさしく高分子の魅力を紹介しています。

■21年の行事について。

 1920年にドイツの化学者から高分子という考え方が初めてできてから2020年で100年になりました。2020年3月に「高分子説100年記念シンポジウム」を開催する予定でしたが、新型コロナウイルスの影響でキャンセルになりました。そこで、2021年3月にWEBで参加費無料で開催する予定になっていますので、ぜひ参加してほしいですね。

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。

全文:約2206文字

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