専門技術団体に訊く6 団体インタビュー 石油化学工業協会 志村勝也専務理事

2022年03月31日

ゴムタイムス社

専門技術団体に訊く6 団体インタビュー
公益社団法人石油化学工業協会 志村勝也専務理事

保安・安全の確保・向上を第一に持続的な社会に向けて取り組んでいく

 石油化学産業の持続的発展に向け、①保安・安全の確保・向上、②事業環境の整備、③グローバル対応の強化の3本柱を掲げ事業活動を行っている石油化学工業協会(JPCA 以下、石化協)。志村勝也専務理事に同協会の設立をはじめ、活動内容、最近力を入れている取り組みなどを尋ねました。

◆設立について。

 石化協は、1957年2月に結成された「石油化学工業懇話会」を母体に1958年6月に設立されました。発足時の会員会社は10社でした。この年は、山口県の岩国市で石油化学コンビナートが国内で初めてできた記念すべき年でもありました。会員社数は一時期、40社くらいまで増えていきましたが、企業の合併や経営統合などもあり、現在の会員社数は26社となっています。

◆主な活動内容を教えてください。

 活動内容については、①保安・安全の確保・向上、②事業環境の整備、③グローバル対応の強化の3つがあります。この3本柱を中心に事業活動を長年継続して取り組んでいます。
 まず保安・安全の確保・向上では、基礎化学品の原料を供給する産業として、安全に製品を供給するという観点から、保安・安全の確保がもっとも重要であると捉えています。たとえば、会員のトップ同士の懇談会などの内容を元に「安全メッセージビデオ」を発信しており、現在は新しい安全メッセージビデオの更新版の制作に取り組んでいます。
 また学習伝承として、若手の現場管理者のために、過去の事故事例を共有するセミナーなどを開催しています。そして、現場の安全に貢献した課長クラスに保安表彰を行い、保安・安全に対する動機付けの機会につなげる取り組みも行っています。さらに、石油化学産業分野における安全を理解できる将来の経営層の育成や企業の中核となる安全の専門家の育成を図ることを目的として、石化協と(一社)日本化学工業協会様、そして石油連盟様で「産業安全塾」の運営を行っています。
 2つ目の事業環境の整備では、定修日程の調整を円滑に進めるために、「定修会議」を開いています。また会員1社では難しいですが、団体の強みを活かし会員各社の意見を吸い上げ、石油化学産業の規制改革の要望として政府へ提出しています。そのほか、税制改正についても、経済産業省や他団体と連携して意見を集約し実現に向けて努めています。
 3つ目のグローバル化対応の強化については、アジア石油化学工業会議(APIC)に係っています。APICは日本、台湾、韓国、マレーシア、タイ、シンガポール、インドの加盟7協会で構成され、日本は石化協が窓口になっています。アジアの石油化学産業従事者のコミュニケーションの場として、毎年開催していましたが、コロナ禍で2020年、2021年は残念ながら延期となってしまいました。22年はインドの協会が担当のため、開催可否について、再度協議する予定です。22年あるいは23年にはリアルで実現できたらいいと考えております。

◆2022年度の活動について。
 石化協の総会は6月に開いています。新年度は7月からスタートとなるため、各委員会の活動は世の中の状況を判断しながら決めています。
 ただし、今まで注力している3本柱(①保安・安全の確保・向上、②事業環境の整備、③グローバル対応の強化)は、引き続き主要な事業として行っていく次第です。21年度の活動については、総会は書面対応で行い、研修会や講演会はオンラインに切り替えて開催しました。また産業安全塾もコロナ禍で開くことができなかったため、通常でしたら年間13回実施していましたが、過去の受講者や関係者に向けて、年4回の特別講演を行いました。
 オンラインを開催することにより、参加する人数制限もなく、多くの人が参加していただいております。なぜなら、会員企業のなかには、コロナ禍で外部との接触を回避している企業も多いからです。とくに現場の方は、感染対策として回避している方は多いです。ただ、過去の事故事例を共有するセミナーでは、現場の方は参加したいという要望が多く、オンラインに切り替えたことで東京に出向かなくても、現場で参加できるため、多くの方が参加しております。

◆石化協の特徴は。

 石化協の運営では、石油化学関連の企業が中心です。会員社数が26社と変わりませんが、やみくもに会員を増やすのではなく、一定規模以上の会員企業の集まりですので、お互いが見える関係にあることが特徴です。また会員社数が限定されているため、各委員会での活動や意見交換が活発に展開されています。これにより、健全な情報交換や共有化ができていると理解しています。

◆発行刊行物について。

 協会の発行刊行物では、1961年初版から長年にわたり、会員企業の協力で「石油化学工業の現状」を刊行しています。昨年で発行して60年目を迎えました。石油化学産業の現状を的確に把握できる内容構成となっています。また、「石油化学ガイドブック」は2002年に初版を発行し、最新は19年3月に発行した改訂6版になります。同ブックは私たちの生活に欠かすことの出来ない石油化学製品を生産する石油化学工業についての基礎的な解説書です。

◆最近のトッピクスは。

環境対策として、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの実現に向け、世界全体が取り組んでいる中、石油化学業界にとって非常に大きな転換点だと考えております。
たとえば、カーボンニュートラルひとつ取っても、石油化学産業はCO2を排出するプロセスで、大きなウエイトを占めています。その中で、CO2を削減することは、各社にとって大きなテーマです。またプラスチックのリサイクルついても、石油化学プラントが必要不可欠です。そのような環境下、会員企業はカーボンニュートラル等の方向性を示しつつ、試行錯誤している状況です。そのなかで石化協として、会員企業にとって必要な情報を提供していくほか、会員企業1社では出来ないことも一緒に考えていき、石化協として「どこまでサポートできるのか」、「どこまで関わっていけるのか」が課題になります。さらに、公的機関に対して、業界の立場を表明していくことも大事です。現在は、石化協でワーキンググループを作り、情報共有や勉強会も開催しています。これらの動きに対して、事務局として大きな関心を寄せています。

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。

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