専門技術団体に訊く8 団体インタビュー 全日本プラスチック製品工業連合会 八尋一恭専務理事

2022年12月01日

ゴムタイムス社

専門技術団体に訊く8 団体インタビュー
全日本プラスチック製品工業連合会 八尋一恭専務理事
会員増加への取り組みを推進 「プラスチック資源循環促進法」に対応


 全日本プラスチック製品工業連合会(大野泰昭会長)は、プラスチック製品の製造や加工団体として、プラスチック産業の発展に貢献する国内最大のプラスチック団体だ。同連合会の八尋一恭専務理事(東日本プラスチック製品工業協会専務理事)に、同連合会の特徴や取り組み、現在の課題などについて尋ねました。
 
◆団体の特徴を教えてください。

 全日本プラスチック製品工業連合会(以下、連合会)は、昭和38年(1963年)に設立しました。連合会はプラスチック製造業のなかでも、主に射出成形、圧縮成形、ブロー成形に携わる全国に3つの一般社団法人で構成されています。
 3つの団体は、(一社)東日本プラスチック製品工業協会(以下、東日本協会)、(一社)、中部日本プラスチック製品工業協会(以下、中部日本協会)、(一社)西日本プラスチック製品工業協会(以下、西日本協会)になります。昨年まで、この3団体のほかに(一社)神奈川県プラスチック工業会も加わっており、4団体の組織でした。しかし、会員数の減少などの理由で、(一社)神奈川県プラスチック工業会は、今年3月末をもって解散しました。
 構成する各団体は、それぞれ特徴があります。
 東日本協会は関東地区、東北地区、北海道を網羅しており、電気・電子部品はじめ自動車、医療などのプラスチック製品を作る企業様が多いです。
 中部日本協会は、地区の特性上、自動車部品を扱う企業様が多いように見受けられます。
 西日本協会は、関西地区や九州地区までの範囲で、主に日用品を製造する企業様が多いのが特徴です。
 会員は、正会員、団体に分類されています。会員数は令和4年3月現在で、東日本協会が229人、中部日本協会が244人、西日本協会が421人です。

◆省庁との関わりについて。

 連合会はプラスチック業界の発展に向け、経済産業省と情報収集や意見交換をしています。また、連合会傘下の東日本協会は関東経済産業局、中部日本協会は中部経済産業局、西日本協会は近畿経済産業局でやりとりをしています。連合会の役員は、3団体の役員で構成されています。
 また、厚生労働省とも関係があります。厚労省が統括する職業能力評価の専門機関である中央職業能力開発協会が実施する国家資格の技能検定の運営に協力しています。
 具体的には、技能検定のひとつであるプラスチック成形技能検定で、射出成形、圧縮成形、ブロー成形、インフレーション成形、真空成形の5つのうち、連合会は射出成形、圧縮成形、ブロー成形の3つの成形法に係る技能検定を実施しています。連合会が中心となり東日本協会、中部日本協会、西日本協会が試験の運営に携わっています。

◆技能検定の状況は。

 日本人のプラスチック検定受検者数はほぼ横ばいです。ただ、外国人の技能実習生の受検者数が大幅に増加傾向になっています。なお、コロナ禍で技能実習生は一時入国できなくなりましたが、現在は急速に増えていると聞いております。

◆活動内容や取り組みを教えてください。

 通常総会や新年賀詞交歓会などの行事を行っています。そのほか、連合会傘下の3団体を通じて、正会員企業に対し、4半期ごとに景況観調査アンケートを実施しています。このアンケートをまとめ、会員の皆様にプラスチック業界の現状を報告しています
 また、時代に合わせて技能検定の内容などの見直しをするため、連合会から委員を派遣しています。
 連合会と別に、連合会傘下の3団体は、広報活動のひとつとして会報誌を発行し、団体の情報や団体活動のPRも行っています。また3団体では、技能試験を受けるための勉強会や通信講座も開催しています。さらに、新入社員に向けての講座など会員のニーズにあった講座も開いています。

◆プラスチック業界の現状は。

 連合会が行った2022年4~6月期会員景況感調査アンケートによると、一番の経営上の問題点は、原材料高になりました。アンケートでも、8割以上の回答があり、ほぼ100%に近い状況です。ただ、原材料高については、今に始まったことではなく、2年前のアメリカ・テキサス州で発生した寒波の影響で、今もなお原材料高が続いています。その上、ロシアのウクライナの侵攻により石油化学関連の価格が上昇しており、プラスチック業界は、大変厳しい状況です。
 また、製造業離れなどの影響で採用難が3割超えています。
 ただ、コロナ禍で消毒液のボトル製造を行っている一部の企業は売上が増加したと聞いています。

◆今後の課題と取り組みについて。

 今期に開かれた総会の役員改選で、東日本協会の名誉会長兼理事の大野泰昭氏が会長になりました。その時、大野会長は4つの目標を掲げました。1つ目が会員の増加への取り組みです。2つ目は、会員企業の採用難や人手不足の解消があります。この対策のひとつに、プラスチック業界も特定技能制度の対象に認可していただくため、経済産業省に働きかけを行っていきます。3つ目では、海外プラスチック製品製造業との交流を行っていきます。最後の4つ目については、今年4月に施行された「プラスチック資源循環促進法」に対して、今後は環境に配慮したモノづくりが必要になり、まずは3R(Reduce、Reuse、Recycle)をしっかりと取り組んでいく次第です。

◆最近のトッピクスは。

 連合会として、プラスチック業界の生産性向上、省エネ、高付加価値に向けたIoT導入への取り組みを行っています。
 連合会傘下の3団体は中小零細企業が多く、IoT導入をするには、コストがかかります。そこで、西日本協会、近畿経済産業局、ムラテック情報システム㈱の3者が経済産業省の平成28年度「IoT推進のための社会システム推進事業」を活用して、グローバル基準の規格EUROMAP63に準拠した成形機のデータフォーマットの共通化、そのデータを統合するシステムである「ミドルウェア」の開発を行いました。連合会は、ミドルウェアの販売をしています。ミドルウェアの導入を希望して会員になるケースもありました。会員の皆様には活用していただきたいです。

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。

全文:約2707文字