活躍するリケジョ011 東ソー
高分子材料研究所ゴムグループ 齋籐峰花さん、ウレタン研究所エラストマーグループ 鈴木彩未さん
◆現在、どのような開発をしていますか。
齋籐 私が所属するゴムグループでは主に、当社製品であるクロロプレンゴム(CR)やクロロスルホン化ポリエチレン(CSM)等の合成ゴムのグレード開発や、顧客への技術サービス、これまでに培われた合成や配合処方に関する知見を活かした新材料の開発や新規用途への展開に取り組んでいます。
その中で、合成ゴムの接着原理の解明と、接着界面の解析技術確立に取り組んでいます。CRやCSMは接着剤の原料としてよく使われているのですが、なぜ接着するのか?までは明らかになっていません。接着原理を理解できれば、それを利用してさらなる高性能化を目指すことができます。
鈴木 ウレタン研究所で、ウレタン樹脂の新製品開発や顧客への技術サービスを担当しています。ウレタン樹脂は、イソシアネートとポリオールを混合させてウレタン化反応を起こすことで生成され、原料のイソシアネートとポリオールの種類や配合比等を変化させることで、自動車のクッションシートや塗料、接着剤など様々な用途に使い分けができるようになります。現在は家庭用、工業用の浄水器に使用される接着剤の開発に取り組んでいます。
◆仕事の魅力ややりがいを教えてください。
齋籐 界面の研究は学術的に新しい分野なので、最新の学術的知見や測定手法を取り入れなければ研究が進まないことです。大学の先生と議論したり、学術論文を読んだりすることで、日々新たな知識を吸収しています。また、界面状態は複雑なので、再現性が取れない、解析が困難、仮説と逆の結果になる、といったこともあるのですが、その点も楽しんでいます。つい最近も、もともと考えていた仮説よりも面白い現象が起こっていることがわかってきて、これまでにないコンセプトの製品に繋げられるかもしれないと感動しました。
鈴木 浄水器から供給される水は直接体に取り込まれるため、原材料にも安全性が求められます。そのため、接着剤の原料は、顧客にて安全性が認められた物質に限られます。新規原料を使用すれば容易に解決し得る課題が多々ある中、限られた原料での検討は難しく感じますが、各原料の特性をよく理解し、樹脂設計をすることで顧客の要望物性を達成出来たときはやりがいを感じます。
◆仕事で心がけていることは。
齋籐 入社当初から、まずは自分で考え、積極的に提案することを心がけています。また、自分のテーマの成功だけでなく研究所全体の発展にも貢献できるようになりたいので、他部署の接着関連テーマで悩んでいる方と一緒に研究方針を考えさせていただくなど、周りに良い影響を及ぼすような行動ができないか意識しています。
鈴木 今までの仕事において、研究が行き詰りそうになった時は、積極的に周囲の意見を取り入れるようにしてきました。一人で考え込むよりもチーム内で意見を交わすことで、良いアイデアがひらめき、開発が円滑に進むことが多々あり、意見交換を意識的に心掛けています。
◆理系の道に進んだ理由を教えて下さい。
齋籐 小学生の時、身の回りのものの成り立ちを調べることが好きだったのですが、調べるうちに、世の中のあらゆるものが誰かの研究の結果生まれたことに感動を覚え、発明家になりたいと思ったことがきっかけです。そして、人々の生活を支えている物質や材料について学びたいと考え、大学では物質科学工学を学びました。大学院では界面における高分子の物性に関する研究に没頭し、材料内部の物性からは予測困難な現象に魅了されました。
鈴木 数学が好きで、理系科目が得意でしたので理系を選択しました。高校生の時に化学の授業で鎮痛剤として使われているアセチルサリチル酸を合成する実験を体験した際、化学の力で医療に貢献できるものを作れることに感動し、理系の中でも化学の道を志しました。
大学では工学部工業化学科で生物由来原料を用いた医療材料の開発を行っていました。日々の研究や国際学会での発表等、非常に大変でしたが、興味のあった医療分野の研究に携わることができ、充実した研究生活を過ごしていました。
◆東ソーを選んだ理由を教えて下さい。
齋籐 幅広い材料を扱っていることと、既存製品で高いシェアを獲得しつつも、さらに機能的な材料の開発に注力していることが決め手でした。
当時は、自分の専門性を深めながらも様々な材料について広く知識を得ることが、私にしかできない製品開発に繋がると考えていて、東ソーならそんな働き方を実現できると思いました。入社時から大学院での専門知識を深められるテーマを担当出来たことは、非常に幸運でした。
鈴木 就職活動の際に、研究の検討方針は自由に任せてくれる社風であると聞いており、自分で幅広く検討して挑戦できる点に惹かれ、東ソーを志望しました。また、面接時の雰囲気が良く、自分に合いそうだと感じたことも理由の1つです。
◆入社後の経緯や現在の職場環境は。
齋籐 入社してから継続して同じテーマを担当しています。入社当時は、上司に「界面のプロなんだよね?」と言われ、期待を超えたいと思ったことをよく覚えています。また、上司や先輩が私の意見に耳を傾けてくださるため、意見を言いやすい職場だと感じています。
鈴木 入社後約3ヶ月間製造部に仮配属し、三交替勤務を経験するなど現場を学びました。ウレタン製造部での研修にて、ウレタンに興味が湧き、ウレタンの研究をしたいと本配属先はウレタン研究所を希望しました。
疑問に感じた事は気軽に質問でき、若手にも耳を傾けてくれる会社だと感じています。
◆今後、どのような開発をしていきたいですか。
齋籐 人の生活を支えていると胸を張って思えるような製品開発を行いたいです。そのためには食、エネルギー、地球環境といった、人類の生存に根源的に関わることについて、素材の観点から解像度を上げていくことが必要だと考えています。
今はまだ勉強不足で解像度の低い部分ばかりですが、ゆくゆくは新しい問題の解決につながる提案が出来るような、大きな視点を持った研究者になりたいです。
鈴木 ウレタン研究所が今まで開拓してない分野での新規製品開発に取り組んでいきたいです。最近は営業と一緒に顧客訪問をすることで、お客様のニーズや要望を積極的に収集し、開発のヒントを探っています。自分が開発に携わった製品で人の生活に貢献することが最終的な目標です。
◆休日の過ごし方は。
齋籐 休日は、映画をカメラワークや音響の面から鑑賞してみたり、絵を描いたり、料理とお酒の組み合わせを考えて綺麗に盛り付けたりなど、アート的な趣味を楽しんでいます。芸術家の方々の感性から、日頃の研究開発でもロジックのみに囚われすぎず、アート的な感覚も発揮できるようにならなければと感銘を受けています。
鈴木 運動や旅行をして過ごす事が多いです。運動は登山やフィットネス、水泳、ヨガなどをしており、体を動かすことで思考をリセットして仕事とプライベートのメリハリをつけています。旅行は、ご当地グルメを目的に行先を選ぶことが多く、食事を中心に楽しむことでリフレッシュしています。
*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。