活躍するリケジョ012 日本ゼオン
総合開発センターエラストマー研究所 小池清香さん
◆現在担当されている仕事について教えてください。
私が所属するエラストマー研究所では、合成ゴムやラテックスの製品開発やお客様の技術的なサポートを主に行っています。
その中で、私は合成ゴム製造時にゴムの中に残る触媒の残渣を除去する技術開発の担当をしており、これまで触媒残渣の対処が課題となっているこの製品開発に携わっていたこともあり、本開発テーマのリーダーに任命されています。
ゴムが硬化する前の溶液の状態では、溶液中に触媒がナノサイズで残留しており、製品の品質を向上させるためには、ろ過や薬剤での吸着などの方法を用いて触媒を除去する必要があります。また、触媒の残渣により、製品の製造コストも上昇するため、コストダウンの観点からも触媒の除去は必要な作業となっています。触媒自体も貴重な環境資源ですので、溶液中の触媒を回収して、リサイクルすることも求められています。
当初は私を含めた2名のメンバーで、薬剤や手法の組み合わせを試しながら、どの程度触媒が除去できるのかデータの取得を推進してきました。
データを基に試行錯誤を続けた結果、最も効率的に除去できる方法が確立できたので、現在はプラントの実証実験に向けて計画を進めている段階です。
プラントレベルの実証に際しては、設計や生産工程など次々と出てくる課題に対応するため、現在は6名にメンバーを増員し、開発を進めています。
既存の物性を全く変更せずに残渣を除去していくには、まだまた課題があります。お客様の求める物性を実現できる技術にまで高めつつ、2025年中にプラントレベルで採用を目指しています。
◆現在の仕事のやりがいや仕事をする上で心がけていることを教えてください。
合成ゴム事業ではラボでの基礎研究や技術開発、新規用途展開など様々な研究開発を実施しています。ラボレベルだけではなく、合成ゴム工場での生産や量産に関わる開発にも関わる機会も多く、川上から川下まで幅広い業務に携われることが魅力です。
仕事をする上では、事前準備の徹底を心がけています。私は実験回数をむやみに増やさない方針で、事前に計画や準備の時間を充分確保してから実験を行っています。事前準備を怠らないことで、予期せぬ事態が起きても、臨機応変に対応でき、限られた時間の中で効率的に実験ができると考えています。
テーマリーダーとしては、定期的にメンバーが相談できる時間を設けています。開発メンバーに困ったことが起きたら、メンバー全員が集まって解決法を模索するようにしています。
課題に対してひとりで考え込むよりも、周囲に相談した方が早く解決するだけでなく、ひとりでは気付くことができない知見も獲得できます。
相談は開発メンバーだけではなく、他部署や他事業所、会社外部にまで相談する範囲を拡げて、課題解決法を探しています。
◆理系の道に進んだきっかけや、学生時代どのような学問をされていたのか、教えてください。
中学校の担任が理科の先生で、実験を通じて化学の仕組みをわかりやすく教えてくれたことがきっかけで、理科が好きになりました。
高校でも理系を選択し、大学では有機合成の研究室に在籍し、重合開始剤の研究をしました。有機合成の反応は時間がかかることも多いので、毎日夜遅くまで実験を繰り返す日々でしたが、興味深い反応の観察に研究室の仲間と共に没頭しました。
◆現在のお仕事を選んだ理由について教えてください。
理科が好きなこともあり、将来は研究開発に携わりたいと考え、化学メーカーを中心に就職活動を行いました。
その中で、日本ゼオンの研究所を見学する機会があり、担当の社員が研究に対する熱い想いを楽しそうに語っていたことに惹かれました。
社員同士の仲も良好そうで、研究に楽しく取り組んでいる社員が在籍していると感じた事が入社の決め手となりました。
◆入社されてからの印象や現在の職場環境について教えて下さい。
入社前に抱いていた印象と変わらないコミュニケーションが取りやすい職場でした。上司にも気軽に相談できる環境で、風通しも非常に良い職場です。研究で困ったことがあれば、他部署や他事業所の社員からも知見を得ることができます。
また、若手のうちから自由な裁量で研究を任せてもらえるので、新しいことに積極的にチャレンジすることも可能です。
入社後は、エラストマー研究所に配属され、新規製造法の開発や既存製品の用途展開の提案などを始め、アメリカ工場での試作製品の立ち合いなど幅広い業務を経験しました。
また、配属後には3回産休と育休を取得しました。日本ゼオンは育休復帰後の制度として、通常勤務と通常勤務以外で残業などを行わない育児配慮勤務と、時短勤務の3つの勤務形態を選択できます。
私は育児配慮勤務を選択しましたが、自身の状況に合わせて働くことができるので、子育てと両立もしやすく、働きやすい環境にあると思います。
◆今後、どのような取り組みをしていきたいですか?
カーボンニュートラルに貢献できる合成ゴムの新製造方法の開発に興味があります。
既存製品と同じ物性を保持しながら、これまでとは異なる手法を確立する必要があるため、非常に困難な開発になりますが、その分やりがいもあると考えています。
また、ラテックス製品の用途開発にも携わりたいです。ラテックスは今後も成長の余地がある製品ですので、お客様と相談しながら積極的に用途提案を行いたいです。
研究以外では、海外の工場とも深いコミュニケーションが取れるように、英語の勉強にも注力したいです。
◆お休みの日に何をされているのか、教えてください。
三人の息子達と家族で出かけることが多く、夏は海やプール、冬はスノーボード、春はお花見、秋は紅葉狩りなど季節に合わせて行事を楽しんでいます。
平日の休みなどには、都内や横浜のカフェ巡りをしています。カフェの雰囲気に浸りながら、おいしいコーヒーやデザートを食べて気分をリフレッシュさせています。
*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。