ポリマーテック21号 活躍するリケジョ015 ハイケム 閆冬婉さん

2024年05月10日

ゴムタイムス社

活躍するリケジョ015 ハイケム

貿易本部 電子・環境材料事業部 精密化学品部 閆冬婉さん

日本と中国、そして未来の懸け橋になりたい
重要プロジェクトはペロブスカイト太陽電池材料

 日本と中国の架け橋として、貿易事業やC1ケミカル事業、生分解性事業などを手掛けるハイケム(東京都港区、高潮代表取締役社長)。1998年に創立された高潮社長が立ち上げた同社は高速発展を続け、売上高は22年度には1000億円を超え、23年度も1223億円(速報値)と拡大を続けています。23年4月に同社に入社した閆冬婉(えんとうえん)さんにお話をお聞きしました。

 ◆担当されている仕事の内容を教えてください。

 私が所属するグループは、電子・環境材料事業部です。現在、私はペロブスカイト太陽電池材料や、特殊または一般的な半導体製品の販売を担当しています。半導体などに使われる電子材料は、一般的な化学品に比べると、厳しい品質管理が求められます。私は、ハイケムが販売する半導体化学製品に関する金属イオンの検出、カスタマイズされたサービス、品質保証などを担当しています。また、技術と市場調査、技術と機器の提案なども行っています。

 金属イオンの測定では、当社が21年10月に竣工した東京研究所(千葉県柏市)に導入した金属イオン測定装置「ICPーMS(誘導結合プラズマ質量分析法」を用いて分析を行っています。この機器の導入により、ハイケムは自社の化学製品の輸出入業務において金属イオンの独立的な第3者検査ができるようになりました。これにより、製品の品質保証や、具体的な品質目標を達成するため製品の精製が可能となり、顧客からのハイケムが輸出入する製品への信頼を深めることにつなげています。

 また、ペロブスカイト太陽電池材料の販売は私にとって今年の重点プロジェクトです。エネルギー消費量の急激な増加によるエネルギー不足の問題は、世界的な喫緊の課題です。新しいクリーンエネルギーが求められる中で、ペロブスカイト太陽電池は近年注目を集めています。ハイケムはグリーンケミカルを推進していて、ペロブスカイト太陽電池材料についても今後積極的に取り組んでいきたいテーマの一つになります。

 ◆これまでのご経歴を教えていただけますか。

 私は中国東北部の出身で、中国の大学を修士として卒業しました。卒業後は、半導体ファウンドリーメーカーのUSCXMに就職し、エンジニアとして従事していました。日本には様々な半導体製造装置メーカーがありますが、USCXMの時はこれら日本の半導体製造装置メーカーのエンジニアと仕事を行う機会も多かったです。

 日本企業で働く方々と接するなかで、日本への興味が自然に沸いてきましたね。その中で日本の名古屋大学が留学生プログラムを行っているのを知り、博士課程に応募し、無事試験に合格することができて、2017年10月に留学生と来日しました。

 ◆日本に来日されてからの活動は?

 名古屋大学では物質理学(化学系)を専攻しました。修士課程の研究テーマは、リチウムイオン電池の導電性電極材料についての開発でした。また、新しい電極材料の開発も行っており、その研究成果には絶縁材料を効率的な導電材料に転換することが含まれていて、論文を発表し特許を登録することもできました。社会で働いた後に、学校に戻って学ぶ経験は非常に特別なものです。名古屋大学での留学経験は、私の人生で忘れられない貴重な経験となりました。

 博士課程修了の年は、新型コロナウイルスが猛威を振るっていたため、特別にオンラインでの最終発表を行ったのはよい思い出です。また、この年には名古屋大学で理学研究科の外国人留学生の教育研究を奨励する賞として1人だけ選出される、「Nakamura・Usui Prize」を受賞でき、3年間の経験に満足のいく結果を出すことができました。卒業後は2021年4月から神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)の戦略的研究シーズ育成事業に参加するため、東京工業大学に配属され、研究員にとして2年間のプロジェクトに参加しました。そして2023年4月にハイケムに入社することになりました。

 ◆ハイケムに入社したきっかけを教えてください。

 私は半導体企業に勤めていた経験、そして研究員として従事してきた経験もあります。この経験を生かせる技術営業という職種にとても興味をもちました。また、ハイケムは中国出身の社員が多くて、親しみやすさを感じたのもハイケムに入社を決めた理由の一つです。私の日本語はさらに勉強が必要ですが、他の社員からもサポートが受けられるのでありがたく思っています。

 入社後は技術営業の社員として働いており、営業の仕事は東京本社(東京都港区)、技術の仕事は東京研究所で行っています。仕事の割合は営業が50%、技術が50%と半々とすることを今年の目標にしています。営業の仕事はお客様の受注から輸出入にかかわる通関業務、そしてお客様へのフィードバック、さらに次回のお客様へのオーダーまで一連の業務を担当します。私だけでなく、ハイケムの営業スタッフはすべての業務を担当します。まだまだ勉強中ですが、上司のアドバイスをもらいながら、様々なことを学んでいます。

 ◆ハイケムで働いていて良かったことは。

 お客様から私の精製結果が良かったと返事をもらい、喜ばれたときは嬉しかったですね。ハイケムが多くのお客様に選ばれている理由の一つにレスポンスの速さがあります。お客様も当社以外のさまざまな商社に仕事を依頼されていると思いますが、私のレスポンスの速さに満足してもらえたときは、達成感がありました。

 また、ハイケムは私のような入社したばかりの社員でも上司に相談しやすい雰囲気があります。上司も私の意見を尊重してもらえていますし、仕事を任せてもらいながら、フィードバックももらえます。それがお客様に対するレスポンスの速さにつながっていると感じています。

 ◆仕事をする上で大切にしていることはありますか。

 一番は仕事に対する責任感です。例えば、私が携わる商品が日本から中国に輸出されるときには、日本から中国に正しく配送されているか管理するのはもちろん、中国にいるハイケムの担当者へ連絡したり、次回のオーダーがあるのかどうかを管理したりしないといけません。お客様が満足されていると、良い関係が構築できている証にもなるので、今後の仕事もスムーズに進みます。そのためにも責任感を持って一つひとつの仕事を行うことを大切にしています。

 ◆理系の道を選ばれた理由を教えてください。

 物事を理論的に考えるが好きで、高校生の時に理系を選びました。中国には「理科を身につければ、世界中を歩いても恐れることはない」という古い諺があります。学ぶ過程で、理系は確かに自分の論理思考を強化し、独立して問題を解決する能力を養うのに役立ちました。理系を選んだことは、今の私を形作っていると思います。大学からずっと化学を専攻し、化学は物理や数学などの専攻に比べると実験の授業が多い印象があります。私は実践的なプロセスが好きで、本で学んだ知識を具体化することに幸せを感じるタイプです。また、研究のプロセス自体も新しい成果を生み出すプロセスであると捉えていて、自分の研究成果に達成感を感じたりもします。

 ◆今後のハイケムでの目標を聞かせてください。

 現在は営業と技術の割合が半々ですが、今後は営業の割合を徐々に増やしていきたいです。そのためにはお客様とのコミュニケーションスキルを磨くことが大切だと思っています。お客様が満足できるサービスを提供していたいです。

 一方、精製業務など東京研究所で行う技術の仕事に関しては、後輩を育てることにも力を注ぎたいです。ハイケムは1998年に創立され、急成長している会社です。私もお客様が困られていることを解決しながら、日本と中国、そして未来の架け橋になれるような存在になりたいと思います。

 ◆休日の過ごし方は。

 3歳の娘がいるので休日はもっぱら育児ですね(笑)。ただ、休日のうち1日は夫と娘と家族一緒に外で遊ぶ時間を作っています。先日はいちご狩りに行きましたし、テーマパークにも行きました。家族と一緒に過ごす時を大切にしています。

 また、ハイケムは私のように育児や家事をしながら働いている女性が多く勤務しています。ワークライフバランスを非常に大切にしてくれる会社ですし、ハイケムを選んだ理由の一つでもあります。平日はフレックス制度を使って子どもを迎えに行きます。また、子供が急な病気になったときも配慮してもらえるので、働きやすい環境を用意してもらえていることに感謝しています。

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。

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