活躍するリケジョ018 東レ 坪根妙光さん

2025年02月21日

ゴムタイムス社

活躍するリケジョ018 東レ

樹脂技術部樹脂加工技術室係長 坪根妙光さん

材料開発の精度向上、スピードアップに貢献
東レしかできないような分析をしお客様に提案

 東レの樹脂事業はPPS、ナイロン、PBTなどのエンジニアリングプラスチックをはじめとした各種樹脂および樹脂成形品を展開しています。それを支える部署のひとつに樹脂技術部があります。樹脂技術部樹脂加工技術室の坪根妙光さんにお話をお聞きしました。

 ◆樹脂技術部について。

 樹脂技術部では、高性能樹脂材料の開発に力を注いでいます。エンジン廻りや内装部品などの自動車用途、水廻りなどの住設用途、コネクタなどの電気電子部品用途など、多岐にわたる用途に対応した材料開発を行っています。入社当時、女性比率は5%程度でしたが、その割合も増えてきております。

 ◆どのような研究などをされていますか。

 樹脂技術部の中で、私は樹脂加工技術室に所属しています。樹脂加工技術室には、分析、CAE解析、製品安全などのグループがあり、私は分析を担当しています。分析には、大きく分けて化学分析と観察分析があります。化学分析では、樹脂材料の有機物や無機物の分析などを行います。例えば、様々な原料を使用しコンパウンドした新規樹脂材料の特性が狙い通り発現しているかを確認するために特定成分の分散状態を分析したり、必要な原料が設計通りに入っているかを確認したりするなど材料開発の精度アップ、スピードアップに貢献しています。

 また、顕微鏡などを用いた観察分析も担当しています。お客様で生産した樹脂製品の表面や製品内部状態を観察することで、不具合なく成形されているのかを確認し最適成形条件の提案を行っています。更に、同樹脂製品で割れなどが発生した場合、その原因調査を行い、対策のための加工条件、金型変更提案なども行っています。

 ◆仕事のやりがいを教えてください。

 以前はできなかった分析に対して、新しい方法を自ら考え、細かい調整や試行錯誤の結果、新しい分析技術を確立した瞬間はやりがいを感じますし、面白いですね。また、分析途中の検体の色や状態がいつもと違う場合、常に新たな発見に繋がると思って分析しています。

 ◆仕事をする上で、心がけていることを教えてください。

 新しい技術や手法を試す際にはチームのサポートが欠かせません。そのため、周りの人に頼りながら、仕事を分担して進めるようにしています。また、常にチームメンバーとのコミュニケーションを大切にしています。情報を共有し、お互いの意見やアイデアを尊重することで、より良い成果を生み出せると感じています。

 ◆学生の時、理系の道に進んだ理由は。

 中学時代に問題集を解く中で、理科の魅力を感じ、高校では実験が楽しく、実験の多い学問という理由で化学を選択しました。単純に研究者がフラスコを持っているイメージに憧れていましたし、化学式にも興味を抱いていました。そして、大学では化学を専攻し、合成化学の研究室に入っていました。その流れで大学院まで進み、テーマは異なりますが合成化学の研究をしていました。

 ◆現在のお仕事を選んだ理由を教えてください。

 東レは多岐にわたる分野で事業を展開しており、様々な経験が積めることが魅力でした。また、大学の先輩からのアドバイスもあり、東レの職場環境が良いと聞いていました。更に学生時代に東レが開発している最先端材料である高伝導性のカーボンナノチューブに興味を持ったことも東レを希望したきっかけのひとつになりました。

 ◆入社されてからの職歴を教えてください。

 入社してからPBTやPLAなどの樹脂の材料開発に約8年間携わっていました。そこでは難燃性が優れたPBT樹脂材料の開発、優れた柔軟性を付与した生分解性特性を持つPLAの開発なども行ってきました。現在は先ほどご説明した樹脂の分析に携わっています。

 ◆現在の職場環境について教えてください。

 とても仕事がしやすい環境です。仕事は自分の采配で進められ、仕事とプライベートのバランスが取りやすいです。

 樹脂技術部の大半がワンフロアに集まっているため、困ったことがあればすぐに相談できる環境が整っています。特に、ベテランの先輩方からのアドバイスが得られやすい点が良いですね。例えば分析で言えば、分析結果が出た場合、分析の考察だけではわからない時にすぐに他のグループに相談できる環境になっています。

 ◆今後、どのような研究をしていきたいですか。

  現在の開発では、電気自動車(EV)に関連する材料の開発や、環境負荷の少ないリサイクル樹脂材料の開発などに力を入れているので、それをサポートしています。そのうえで、分析は開発段階から取り入れることで開発スピードをアップすることができますので、東レしかできないような分析をし、お客様に提案をしていきたいです。

 また、人材育成に力を入れていますし、技術伝承も重要だと思っています。

 樹脂は奥深い材料ですので、材料設計だけではなく、コンパウンドや成形などの知識を更に身につけて、今後も分析に関わる仕事を続けていきたいです。

 ◆仕事とプライベートを両立するために心がけていることがあれば、教えてください。

 仕事とプライベートのバランスを保つために、仕事の計画をしっかり立てることを心がけています。また、私が長い間働くことができているのも、家族の協力と理解があってのことだと思っています。これがもし1人で全てのことを頑張らなくてはいけないとなると、絶対に上手くいかなかったと思います。その意味でも、今の職場は自由度が高く、良い職場環境です。だからこそ、時間の制約がある中で効率よく仕事を進めるため、日々のスケジュールを細かく管理しています。

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。

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