専門技術団体に訊く13 団体インタビュー
発泡スチレンシート工業会 辻脇伸幸専務理事
PSPの普及・啓発への広報活動に注力
持続可能な社会と消費者への貢献目指す
発泡スチレンシート工業会(柏原正人会長)は、発泡スチレンシート業界の健全なる発展に貢献することを目的に活動しています。辻脇伸幸専務理事に沿革をはじめ、活動内容、最近のトピックスなどについてお聞きしました。
──沿革を教えてください。
発泡スチレンシート工業会(JASFA :JAPAN POLYSTYRENE FOAMED SHEET INDUSTRY ASSOCIATION 以下、工業会)は、再生資源の利用の促進に関する法律の立法化に伴い、通商産業省(現:経済産業省)の指導のもとトレー回収・再資源化事業を主たる目的として、1991年4月に設立しました。その内容は、「消費者がトレーを洗浄・乾燥して分別排出」し、「各地の行政主体でトレーの収集・回収業務を実施」、「流通業者が搬送」、「容器業界は処理・再生」を担当する4者一体方式で事業開始しました。
その後、2000年4月から「容器包装リサイクル法(容リ法)」がトレーにも施行され、各地行政が容リ法に従い活動しています。
──工業会について。
設立時は会員企業6社体制でしたが、時代の流れから企業の統廃合などがあり、現在は3社体制になっております。3社は積水化成品工業㈱様、㈱JSP様、共栄産業㈱様になります。
役員については会長、理事、監事で構成されており、会長は積水化成品工業㈱の代表取締役社長の柏原正人氏が就任しています。会長の任期は2年になります。事業年度は1年で毎年4月1日から翌年3月末迄です。総会は毎年4月に実施しています。
──事業内容を教えてください。
大きく分けて3つあります。発泡スチレンシート工業会及びこれに関する事項の調査研究、発泡スチレンシートに関する環境対策の推進、発泡スチレンシートの普及・啓発にかかる広報になります。
また現在の活動については、発泡スチレンシート(PSP)の特性を可視化データで情報提供すべく技術データを整備する技術活動、PSPの安全性や環境適合性(リデュース効果、リサイクル性)などの素材の有用性の理解を促進させるための広報活動も行っています。そのほか、関連法律の改正や新設への対応も工業会の活動のひとつとなっています。
──発泡スチレンシート(PSP)の特長は。
日本では、EPS(ビーズ法発泡スチロール)、PSP(発泡スチレンシート)、XPS(押出法発泡ポリスチレンフォーム)に分類されています。当工業会が扱うPSPは、1962年に本格的に国産化がスタートしました。開発当時、新聞紙の代替として開発されたことから、ポリスチレンペーパーとも呼ばれています。
PSPの特長と用途ですが、PSPは原料が10%、空気が90%の省資源で衛生的な製品です。特長は軽くて強く、緩衝性、断熱性があり、熱成型加工しやすいことです。用途については、食品トレーや弁当、・納豆、・カップ麺容器など色々な食品容器に使用されています。
──PSPの出荷動向について。
2023年の出荷量は前年比の伸びは若干落ちたものの、10年連続で10万トンを超える出荷となっています。コロナ禍の2020年や2021年は、デリバリー需要が活性化して数量は増えました。最近では新型コロナが収まりつつあるなか、食品容器関連では総じてインバウンド需要の回復が見られますが、内中食の容器についてはコロナ禍での需要に比べて少し落ち着きを見せています。
──広報活動への取り組みは。
従来から、PSPの素材の特性やリサイクル効果、使用済みのポリスチレンのケミカルリサイクルなどを消費者の皆様にお伝えすべく、広報活動に取り組んでいます。また、小中学生向けに「環境に優しい素材発泡スチレンシートとは? 」の冊子を配布し、小中学生や理科の先生などにもPSPの理解を深めてもらうようにしています。
2023年12月には、当工業会のホームページを全面改訂し、大人だけではなく、子どもにもわかるようにイラストで表現しているほか、スマートフォンにも対応するようにいたしました。
展示会については、毎年「エコプロ」に日本プラスチック食品容器工業会様と共同で出展しています。2023年も「エコプ2023」に出展したほか、「いしかわ環境フェア2023」にも出展しました。ブースでは、展示パネルやサンプルを見ていただき、プラスチック食品容器やPSPトレーの特長を知っていただく機会を設けております。
そのほか、学研キッズネットへ広告掲載し、PSPに関するクイズを通じて小中学生やその親御様にもPSPを身近に感じていただける活動も実施しています。
──リデュースやリサイクルなど環境対応について。
PSPは発泡することで減量化されていますが、PSPの軽量化を進め、業界を挙げて省資源(リデュース)を追求していきます。また、PSPトレー(白色トレー)は消費者の方が見分けやすく、単一素材であることからリサイクルにも適しています。容器包装リサイクル法のもと、行政および業界でリサイクルの仕組みが動いており、PSPトレーの回収が進んでいます。
さらに、2023年後半に、使用済みポリスチレンのケミカルリサイクルへの取り組みも各業界が連携を開始しました。当工業会は関連団体とともにトレー回収のみならず、リサイクルの輪を広げるように取り組んでいます。
今後も持続可能な社会と消費者の皆様への貢献に向け、PSP製品の追求とその広報活動に努めたいと考えます。
*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。