専門技術団体に訊く16 団体インタビュー 日本接着剤工業会 三重野謙三専務理事

2025年02月26日

ゴムタイムス社

専門技術団体に訊く16 団体インタビュー

日本接着剤工業会 三重野謙三専務理事


接着剤業界の健全な発展と向上を目指す
国際交流や教育活動等積極的に取り組む

 日本接着剤工業会は接着剤業界の健全な発展と向上を目的とし、1966年(昭和41年)6月に設立されました。その目的のもと、振興、環境・安全に対する配慮、国際化の推進等を進めています。三重野謙三専務理事に事業活動をはじめ、国際交流、教育活動などを尋ねました。

──日本接着剤工業会の概要を教えてください。

 日本接着剤工業会は24年で設立58年目を迎えます。現在の会員数は114社のうち、正会員が81社、賛助会員が33社です。ここ5年ほどの間で会員数は減少傾向にあり、特に正会員の減少が目立ちます。これは、会員会社の会社統合や事業撤退などが主な要因です。

 会長は1期2年の任期で、副会長の中から次の会長を選任し、総会で承認される形となっています。

 組織体制では、関東、関西、中部の3つの支部に分かれています。関東が最も多く、関西が次に多いです。委員会や部会も多岐にわたり、環境安全委員会、技術委員会、広報委員会、教育委員会、規格委員会、国際委員会があり、部会としては、エマルジョン部会、シアノアクリレート部会とホットメルト部会があります。さらに、建設用接着剤協議会もあります。国際委員会は最近出来た新しい委員会で、アジア地域接着剤会議(ARAC)や世界接着剤・シーリング材会議(WAC)などを担当しています。

──事業活動について教えてください。

 主に生産調査の実施、標準化の推進、接着剤の認定、技術の振興、環境安全対策、接着に関する教育活動などに取り組んでいます。

 とくに生産調査の実施は、重要な活動の一つとなっています。生産量や出荷量のデータは、会員企業様の動向を把握するために不可欠です。具体的には、3カ月ごとの生産量などを速報で会員様に提供しています。実態調査では、1年間の生産量、出荷量、金額、用途別などを調査しています。会員以外に約100社の企業からデータを収集していますが、退会する企業が増えるとデータの信頼性が低下するため、退会した企業からもデータ提供をお願いし、日本のマーケット全体を把握するために尽力しています。

──標準化の推進と接着剤の認定とは。

 標準化の推進として、JAI規格(日本接着剤工業会規格)は独自規格であり、試験方法を統一している工業会規格です。これを基にJIS規格に作り直すこともあります。また、JIS規格はISO規格を参考にして作られることも多いです。

 接着剤の認定については、3カ月に1回、ノンホルムアルデヒド製品登録申請および更新申請受付を実施しているほか、4VOC(揮発性有機化合物)の自主基準適合製品の登録制度も運営しています。これにより、環境に配慮した製品の普及を推進しています。そのほか、製本用難細裂化ホットメルト接着剤の認定も行っています。

──国際交流などの取り組みについて。

 国際会議に参加する際に、接着剤などに関する国際会議の運営やデータの取りまとめを行っています。特に「アジア地域接着剤会議(日本、中国、韓国、台湾)」に関与しています。これらの会議は4年ごとに開催され、アジア地域の代表者会は毎年行われます。

 24年10月末に、台湾で第7回アジア地域接着剤会議が開催されました。台湾での会議は非常に充実していました。台湾のホスピタリティは素晴らしく、今回初めての試みで植樹祭が印象的でした。次回は2028年に韓国で開催される予定です。

──教育活動について教えてください。

 接着技術学校を運営しており、新入社員や若手技術者向けに、毎年約200名の受講生を迎えています。接着技術学校では、入門講座などを通じて、接着剤に関する基礎から応用までの知識を提供しています。プラスチック接着、金属・複合材接着、紙・包装接着、木質・建材接着、建築接着の5コースに分かれており、東京と大阪でそれぞれ接着管理士認定試験が開催されます。最近では、社員教育に使われている企業様も増えています。

 また、一般向けには接着技術講座を開催しています。

──会報紙と書籍を発行は。

 技術の振興と情報共有として、月1回会報誌を発行しています。会報紙は現在、PDF形式で配布しており、効率的な情報共有が可能となっています。

 また「接着剤読本」や「建築接着工法ハンドブック」などの書籍を定期的に刊行しています。これらの書籍は、業界の標準的な知識や最新の技術情報を提供するもので、多くの現場で活用されています。特に「建築接着工法ハンドブック」は、建設用接着剤協議会で作成しており、第5版が24年度末に発行されます。

──最新のトピックスについて。

 2010年に制定した9月29日(くっつく)は、国内の「接着の日」でしたが、ARACおよびWACのメンバーも共感していただき、国際接着の日にもなりました。

 また小学生を対象にしたポスターコンク実施しており、若い世代への接着剤の普及活動にも力を入れています。具体的には、「『接着剤』に関するもの」、「『くっつく』という言葉から連想するもの」をテーマにポスターを公募し、審査をもって会長賞、優秀賞、特別賞を授与しています。24年は900件以上の応募があり、審査は大変でしたが、非常に意義のある活動だと感じています。ールも

 

 

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。