活躍するリケジョ017 レゾナック
高分子研究所革新材料研究部機能性樹脂グループ 佐野温子さん
撥水コーティングに対する樹脂材料を研究
新樹脂材料の機能として環境面で貢献目指す
23年1月に昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)が統合し、誕生した㈱レゾナックは、「化学の力で社会を変える」というパーパスを掲げ、「世界トップクラスの機能性化学メーカー」を目指す化学メーカーです。高分子研究所革新材料研究部機能性樹脂グループの佐野温子さんに研究や職場環境などについてお話を聞きました。
──今までどのような研究をしてきましたか。そして現在の研究内容は。
高分子研究所の革新材料研究部は五井事業所やつくば(研究開発拠点)、山崎事業所内に拠点を構えています。
私は新卒1年目につくばに配属が決まり、熱を溜める蓄熱材の研究をしていました。パラフィン系蓄熱材よりも、なるべく熱を溜める性能を高める素材の研究です。用途としては、スマートフォンやパソコンの排熱を緩やかにするための研究をしていました。
その後、五井事業所に配属され、今年で4年目になります。研究は主に機能性樹脂の研究になります。具体的には、屋外向けの撥水コーティングに使用される樹脂材料の研究に携わっており、製品化になる前の機能性樹脂材料の基礎研究です。私のチームは、外部の技術を基に、オープンイノベーションを活用し、新しい樹脂材料を設計しております。
──新しい樹脂材料の研究ですが、どのような時にやりがいを感じますか。また仕事をする上で心掛けていることは何ですか。
新しい材料の研究は、どうしても手探りなので失敗することが多いです。失敗した時に、原因を解析したり、上司と議論したりして、解決策を探しながら、改善していくことにやりがいを感じます。
また、仕事上で心掛けていることは、研究で煮詰まったとき、上司や周りに相談することです。テーマは機能性や材料毎に分かれていますが、コーティングという括りは同じなので、お互いに情報を共有しています。また、高分子研究所は失敗に対して、それを財産に替えていく姿勢があり、私は失敗を引きずらずに、様々な視点から解決策などを考えるようにしています。
──五井事業所の職場環境は。
風通しの良い職場です。こちらから声をかければ、丁寧に教えてくれます。もし聞いた人が分からない分野であれば、その分野で詳しい人を紹介してくれるほど、円滑なコミュニケーションが取れています。
また、五井事業所には分析部があり、分析手法など、すぐに相談できる雰囲気があります。これは、研究するうえでとても役立っています。本当に恵まれた環境だと思います。
そのほか、五井事業所は、生産工場内に研究所があるため、量産品を前提に最終製品を意識して研究できることもいい点です。
──理系に進んだ理由を教えてください。
昔から本を読むことが好きでした。中学の頃に『沈黙の春』を読んで、環境に対する関心が高まり、原理を調べ、理解できるとますます興味が湧きました。高校では理系を選択し、大学では、化学科に進みました。大学では、バイオ燃料電池の電極に関する金属錯体について、修士課程まで研究を続けました。
──レゾナックを志望した理由について。
就職活動をしているなか、レゾナックの企業説明会に参加した時、社員の方が丁寧に説明してくれ、その人の熱意が伝わってきました。その時、働きやすい会社だと思い志望しました。また、半導体など様々な材料も扱っている会社でしたので、今までの知見が活かせるのではないかと思いました。
──最近、関心がある分野は何ですか。
私はDXに大変興味があり、研究に活用できるようにしていきたいです。DXを活用できれば、研究の効率化が進み、研究速度も高まります。そうなれば、研究過程の工数が削減し、できた時間を使って様々な提案ができるようになります。また、DXを活用すれば、データベースの共有化に繋がり、属人化された作業の削減にも貢献できます。会社としてもDXを推進しています。
──今後、どんな研究をしてみたいですか。
現在、撥水コーティングに対する樹脂材料の研究を行っていますが、最終目標は、製品として売れる形にもっていくことです。また、この研究で得た技術を現在開発している製品以外でも展開できたらと思います。
最近では、SDGsが注目されています。今の研究を進めていき、新しい樹脂材料の機能として撥水性に優れ、かつ耐久性も向上した材料ができれば、何回も塗り替えせずにすみます。その結果、製品の長寿命化に繋がり、環境面で貢献できると考えております。
*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。